オイコノミア

NHKのEテレで放映されていた経済バラエティ番組です。社会で起きるの様々なことを経済学の知見を生かして面白く解説していきます。
出演は又吉直樹さん、解説は主に国内の様々な大学の研究者の方、ナレーターは朴璐美さんです。

オイコノミアのレビュー記事

オイコノミア「バレンタイン・プレゼント大作戦!?」(後編)(2013/02/12放送分)

「バレンタイン・プレゼント大作戦!?」(後編)と題して、季節柄恋愛と経済学の関係に関しての解説。
ちなみに、前週は同前編ということで、マッチング理論の解説だったが、そこは割愛。
で、まずはライバルがいる状況での「本命チョコ」を渡すか渡さないかの戦略に関して。そこは、ゲーム理論を引き合いに出していた。彼女たちの利得に関しては以下のテーブルのとおり

洋子・直子 渡す 渡さない
渡す 2,2 3,0
渡さない 0,3 1,1

ちなみに洋子と直子は、今回のゲストである政策研究大学院大学助教授の安田洋祐氏と又吉さんから取ったものだが・・・。
ここでまずいえることは、洋子と直子は、いずれもチョコを渡した方が、利得は大きくなると言うこと。個人の利得も、二人の利得の合計もともに最大であるということ。
次に、この状態で洋子あるいは直子が単独で戦略を変えても自分が不利になるだけで、相手をこれ以上不利にすることはできないと言うこと。つまりナッシュ均衡の状態であるということ。ジョン・ナッシュか~何だか懐かしい名前。ジョン・ナッシュは20代前半の博士論文で、このナッシュ均衡を提唱した、いわば天才なのだが、心を病んでしまった。このことは映画「ビューティフル・マインド」で語られている。この辺は番組で紹介されていたのだが、私自身もナッシュの半生を描いた「ビューティフル・マインド」を観て、それまで以上にゲーム理論が好きになってしまっていたので、今回の番組は非常に興味深く観ていた。ビューティフル・マインドを観たのは今から10年以上前だったかな~。番組では、「心を病んでしまった」という表現だったが実際は重い統合失調症で、幻覚や幻聴に悩まされていた。また、同様に「誰からも評価されずに」という表現だったが、実際は冷戦下で暗号技術の開発に従事したことや周囲の期待に対する重圧など複数の因子が原因だったと思うので、番組的に正しかったのかどうかは疑問。
番組ではゲーム理論の成立の話から紹介されていたが、「オスカー・モルゲンシュテルン」と「ジョン・フォン・ノイマン」なんて名前まで出てくるあたり、ずいぶんと番組も気合いが入っている様子。欲を言えば、「ノイマン」は今のコンピューターの元である「ノイマン型コンピューター」を考案した人であることも述べてほしかった。
引き続き、義理チョコの場合の戦略だが、以下のとおり。

洋子・直子 渡す 渡さない
渡す 1,1 3,0
渡さない 0,3 2,2

これは、いずれも渡さないというのが最も利得が高いのであるが、非協力の場合(つまりお互いが示し合わない場合)は渡した方が良いという結論になる。これは、ナッシュ均衡であるが最適な戦略ではない。といことでこれは囚人のジレンマだという解説だった。
で、囚人のジレンマで又吉さんが「親戚が一堂に会した場面でお年玉をいくら渡すか」という事例を挙げていたが、これはまさにその通りだな。最近、又吉さん、ちゃんと分かって話をしているな~。というか、やはり台本なのかな?
さらに、浮気の戦略もゲーム理論で解説していた。

自分・恋人 浮気する 浮気しない
浮気する 1,1 3,0
浮気しない 0,3 2,2

これは、義理チョコと同じマトリックスになるので、お互いに浮気するという戦略を取ってしまう。これも囚人のジレンマだよね。
そして、囚人のジレンマに陥らないための戦略としてトリガー戦略が紹介されていた。これは、
・今までに一度も浮気していなければ、浮気しない。
・一度でも浮気したら、浮気する。
という戦略。
ただし、割引現在価値と絡めてトリガー戦略が無効になるケースも解説されていた。つまり、割引因子が大きければ、囚人のジレンマに陥ってしまうと言うことになるという解説だった。ということは未来のことをあまり重視しないカップルは浮気をすると言うこと。
ということで、今回は、経済学の中で私が最も大好きなゲーム理論(の端緒)の話だったので、非常に興味深く観ていた。が、30分番組ではよく解説されていた方だと思うが、やはり物足りない気がする・・・。というわけで、ゲーム理論の本でも読み直そうかな~~。

オイコノミア(2013/01/15放送分)

「一度はバブルに踊りたい・・・!?」(後編)と題して、バブル経済に関する経済学的な解説。前回の前編もそうだったが、このテーマは経済学としては非常に面白い。ゲストは明治学院大学の佐々木百合教授。ただし、前回と今回、まとめて収録されたものだと思うが、又吉さんの声が枯れていた。体調管理はしっかりしないとね。
前編では「世界史上初めてのバブル経済」の話、「合理的群衆行動」の話などにより、バブル発生の原理に関して概略的な話をしていた。
今回は、さらにバブル発生の仕組みに関して言及していた。特に1990年初頭までの日本のバブル経済とその後米国でおこった住宅ローンバブルの発生に関して、当時の経済・金融の仕組みをもとに解説していた。
・財政論の基本である「信用創造」の解説をしていたが、信用創造という言葉自体は出さなかった。他の専門用語は結構出していたのにね。
・米国の住宅バブルの話では、ローンの証券化の話も出てきた。小口の証券化によってリスクが分散されることになり、「格付け企業」がこれら証券に高い格付けを行ったため、世界中で販売されることになり、住宅価格の下落を機に、リスクが顕在化され、世界的な金融危機を招いたもの。(サブプライムローン問題)
証拠金による「レバレッジ」取引も、必要以上に投機的行動を招いたと解説されていた。
バブルにならないようにコントロールする方法に関しては「金融政策」が出てきた。また「量的緩和政策」も出てきた。しかしながら、バブル崩壊時の急激な経済縮小を回避する(ソフトランディング)の手法については、あまり詳細な解説はなかった。

オイコノミア(2012/12/25放送分)

相当遅くなったけれど・・・
「年の終わりに人生設計!」(後編)と題して、人生設計と経済学のお話。ゲストは大竹文雄教授。
経済学で人生設計を実現させるというテーマだが、これを観ただけで実現させることができるのかなというアバウトな内容だった。
その中で、経済学に関して関係のある用語として出てきたのは、
・時間非整合
・コミットメント
・選択のパラドックス
など。
まずは、「時間非整合」について。時間経過によって価値観が変わるというもの。中長期的に見たら価値が大きいのだが、短期的には別のものが価値が大きく見えると言うこと。番組中ではマリッジ・ブルーなどを挙げていたが、脱サラに関しても時間非整合が成り立つかな。
コミットメントに関しては、ローンを組んで高い買い物をすることなどを挙げていた。有言実行という言葉もコミットメントを表している。番組では又吉さんは有言実行ができないと言っていた。いつの間にかできていたと思われたいからだと言っていたが、実は周りに話して実現できないときの事を恐れているような感じがした。コミットメントというのはまさにそのことなのだが。背水の陣を敷くと言うことだね。
選択のパラドックスは、選択肢が多いほど選択できなくなる、満足度が下がるというものだが。これは実際、優秀な学生が多くの企業の中から就職先を選ぶと、数年後は(他にもっとよい会社があったのではないかと)現状の満足度が下がるという結果がでている。情報過多の時代で、人々が情報に振り回されているのは、まさに選択のパラドックスか・・・。
他には、エンディングノートの話とか出てきたが、これはあまり経済学とは関係ない・・・。人生設計という意味では重要かも知れないけれど。
それから、名言・教訓などを経済学的に解釈するコーナーを設けていたが、これも今回のテーマとあまり関係ない・・・。時間稼ぎの感があった。
ちなみに出てきたのは、
・「ハングリーであれ、愚かであれ」(スティーブ・ジョブズ)
 現状維持バイアス
 同調バイアス
 にとらわれるなと言うことが言いたいそうだ・・・。
・「『明日は、明日こそは』と人はそれをなだめる。この『明日』が彼を墓場に送り込むその日まで」(ツルゲーネフ)
 時間非整合を戒めるもの
だったが・・・。

オイコノミア(2012/12/18放送分)

「年の終わりに人生設計!」(前編)と題して、人生設計と経済学の話。要はライフステージに合わせた貯蓄が必要だとかいうこと。
平均寿命が延びて、企業をリタイアした後の老後の期間が長くなったことにより、その期間の生活のための資金が必要になり、そのために戦略的に資金を貯めていかなければいけないと言うことらしい。
「歴史上 初めて人の寿命が組織の寿命より長くなった そのため全く新しい問題が生まれた」(byドラッカー)
ところで、番組の字幕でドラッカーのことを「ドラッガー」と書いてあった。Peter Ferdinand Druckerだから、最後は濁ることはないのだが・・・。経済番組を標榜しているくせに、こんな誤植は許せないな~~。
経済学関連の用語として出てきたのは。
・トレードオフ
・機会費用
・サンクコスト
 ※新人研修を終えた新入社員に20万円渡すから会社を辞めないかというのは、サンクコストを利用したモチベーションアップなのか?
・時間割引(割引現在価値)

オイコノミア(2012/12/04放送分)

「もっと休んじゃダメですか!?」(前編)と題して、仕事と余暇(ワークライフバランス)の問題を経済的な視点から捕まえようというものの前編。
まずは、1987年の労基法改正で週48時間⇒週40時間に減少したというもの。だが、これは全体の統計的な誤りであり、非正規社員が増え、彼ら(パート、アルバイト)の労働時間が短いため、全体的に少なくなっているようなものだそうだ。正社員に関しては採用や教育コストがかかっているので、長時間労働させるほうが企業としては良い。
一方で、ワークシェアリングというものが一時期はやったが、うまく行っていないというのが現実。
歴史的な話の中では、古代ギリシアでは、労働は奴隷がする卑しいものとされ、一般市民は労働せず、思索や哲学にふけったと言うこと。古代ギリシア語の余暇(スコレー)が、学校(スクール)や学者(スカラー)の語源だというのは初めて知っておもしろかった。
次は、余暇の長さの決定要因の話。講師は川口大司(一橋大学大学院准教授)・・・。やっぱり機会費用の話が出てきた。余暇需要曲線というのは初めて見たが、普通の需要曲線と同じで右下がりだった。で、ここからは笑ってしまったが、余暇に関して「代替効果」「所得効果」の話をしていた。でも、効用曲線も出てこなかったし、グラフの傾きも変えなかったけれど、これでは説明不足だ!
後半は、佐々木常夫氏が登場。彼は時短の専門家であり、部下を定時に帰らせたこと(当然効率も落とさずに)で有名。彼の提唱する時短のキモは
・隙間時間は無尽蔵
・無駄な仕事を切る
・80%を目指す
・プアなイノベーションより優れたイミテーション
だそうだ。う~ん、分かっててはいても実現できる人はどれだけいるだろう。
最後は、ケインズが孫の世代では週15時間労働になっているだろうという予測が外れたというもの。つまり、我々は効率が上がった分を新たな消費に使ってしまい、よりよい生活を送ろうとしたため、更なる労働が必要になったというもの。人間の欲望というのは果てしない・・・。