本稿では、私の中小企業診断士合格に至るまでの道のりに関してお話します。
1.中小企業診断士とは?
中小企業診断士は、医者、弁護士や税理士などの職業に比べると知っている人が少ないです。そこでまず、中小企業診断士というものに関して説明します。
中小企業診断士とは、中小企業の経営課題に対応するための診断・助言を行う専門家のことを言います。中小企業診断士は、中小企業支援法に基づいて経済産業大臣が登録する資格です。その中小企業支援法では、
a.中小企業者が経営資源を確保するための業務に従事する者(公的な支援事業に限らず、民間で活躍する経営コンサルタント)。
b.業務は「経営の診断及び経営に関する助言」。
c.中小企業診断士試験は、法律上の国家資格である。
簡単に言うと、中小企業診断士の仕事は、経営コンサルタントということです。経営コンサルタントを名乗るのは誰でもできます。中小企業診断士の資格は、その人に経営コンサルタントとしての「最低限の」能力があることを国が認定しているということです。
2.中小企業診断士になる方法
中小企業診断協会が実施する試験に合格し、実務補習を修了または実務に従事する方法と、中小企業総合事業団中小企業大学校東京校が実施する中小企業診断士養成課程を修了する方法の2通りがあります。ここでは、試験を受験して中小企業診断士になる方法について説明します。
<第1次試験>
中小企業診断士となるのに必要な学識を有するかどうかを判定することを目的とし、多肢選択式または短答式による筆記の方法で行われます。(現在の試験はマークシート方式による多岐選択式で行われています。)
a.経営学・経済政策(60分、100点)
b.財務・会計(60分、100点)
c.企業経営理論(120分、200点)
d.運営管理(オペレーションマネージメント)(60分、100点)
e.経営法務(60分、100点)
f.新規事業開発(60分、100点)
g.経営情報システム(60分、100点)
h.中小企業経営・中小企業施策・助言理論(120分、200点)
<第2次試験>
中小企業診断士となるのに必要な応用能力を有するかどうかを判定することを目的とし、中小企業の診断及び助言に関する実務の事例並びに助言に関する能力について、短答式又は論文式による筆記及び口述の方法で行われます。当該年度又はその前年度の第1次試験の合格者が受験できます。口述試験は、筆記試験において相当の成績(60%以上の解答と言われています)を得た者を対象に行われます。
i.中小企業診断および実務の事例解析1(80分)
j.中小企業診断および実務の事例解析2(80分)
k.中小企業診断および実務の事例解析3(80分)
l.中小企業診断および実務の事例解析4(80分)
m.口述試験(約10分)
<実務補習または実務従事>
経済産業大臣に中小企業診断士として登録を受けるには、申請の日前3年以内に第2次試験に合格し、所定の実務補習の修了または実務に従事することが必要となります。なお、実務補習の場合は、次のいずれかを15日以上受けることが該当します。
a.指定法人(中小企業診断協会)が行う実務補習。
b.中小企業総合事業団中小企業大学校の養成課程のうち総合実習。
c.都道府県等中小企業支援センターが行う研修。
d.a~cの実務補習と同等以上の内容を有するものと認められる実務補習。
(でも、多くの人は、第二次試験の合格証書と同時に送られてくる実務補習の案内にしたがって実務補習を受講するんだろうな。)
3.志望動機
私が中小企業診断士を目指すようになったきっかけは、1999年の国会です。この年10月の臨時国会は「中小企業国会」と呼ばれています。この国会で中小企業基本法の改正が行われました。それまでの中小企業基本法の目的は、大企業と中小企業の格差を是正することでした。中小企業は大企業に比べて経営資源が劣っており弱い存在と位置づけられていました。改正された中小企業基本法では中小企業をわが国経済の活力の原点と位置づけています。その中小企業基本法の目的も、中小企業の特徴である多様性を生かし本来ある力をフルに発揮できるようにすることになっています。また、新規創業の支援にも力を入れています。
中小企業診断士の位置づけもこのとき大幅に変わりました。それまでの診断士は、各地の支援センターなどで行われる定型的な診断業務がその役割のメインでした。今回の改正で診断士の役割も大幅に変更され、中小企業へのさまざまな支援が行えるようになりました。
これらの法改正を聞いたとき、私は「これからは中小企業の時代だ」という強い思いにかられました。しかしながら、中小企業には時代に対応した経営の革新を継続的に行うためその企業の経営全体を見渡して分析し診断・助言を行う人材が不足していることは否めません。そこで、その中小企業を支援する中小企業診断士を目指そうと思ったのでした。
4.合格&不合格履歴
平成12年:一次試験 不合格
平成13年:一次試験 合格 :二次試験 不合格
平成14年:(一次試験免除) :二次試験 不合格
平成15年:一次試験 合格 :二次試験 合格
一次試験も二次試験も3回ずつ受験したことになります。
5.受験勉強方法
a.一次試験対策
一年目は「日本マンパワー」のビデオ講座で勉強しました。(これは、スカイパーフェクTV!内のチャネル「ケイコとマナブチャンネル」で放送されていました。)ビデオ講座の内容をMDにダビングして、通勤途中に何度も聞きなおしました。(これは、結局4年間続くことになります。)
二年目以降は独学です。書店で目ぼしい参考書を購入しては読みふけることを繰り返しました。
私は「g.経営情報システム」の科目は免除になりますので、それ以外の7科目を受験しました。人によっては、平均点を上げるためにあえて免除の申請をしない人もいるようです。
試験は毎年8月の第1週に2日かけて行われます。
b.二次試験対策
二次試験は、全て独学でした。参考書を購入してノートにまとめました。また、業種ごとの診断のためのフレームワークを小冊子にまとめました。二次試験の免除科目はありません。基本的には一次試験の知識の再確認を行うことと、応用力を養うために問題を数多くこなすことが大事です。過去問は数年分を解きました。市販の問題集ごとに過去問の解答が異なっていることも多いです。(それも、全く反対の解決策を示していることさえあります。)それだけ、難問と言うことでしょう。
試験は筆記が10月の第2週に、口述が12月の第1週に行われます。
6.試験の難易度
手前味噌ながら、難易度は高いです。
一次試験は全8科目をまんべんなく得点しなければなりません。全体で平均60%以上得点することが必要であり、かつ得点が40%未満の科目が一つでもあってはなりません。
実は、平成13年度から一次試験が短答式から多岐選択式に変わりました。そのおかげかどうかは分かりませんが、平成13年度の一次試験の合格率は50%を超えていました。しかしながら、平成14年には合格率は30%台前半、平成15年には合格率は10%台後半となり、平成12年以前の(短答式時代の)水準に戻りました。多岐選択方式で高い難易度と言うことは、問題がひねってあると言うことです。全ての科目で必要とされる知識を深いところで理解していないと合格は難しいでしょう。
二次試験は、問題文に中小企業の事例が示されて、それに対して適切な解決策を解答するものです。そのためには、一次試験の知識を実際の事例に応用する力が必要となります。
事例では、「経営革新」、「新規事業開発」、「労務管理」、「財務管理」などの課題を抱えた中小企業が登場します。問題文は長文です。その中から問題点を抽出し、適切な解答を導き出さねばなりません。また、各設問にはストーリー性が要求されます。解答全体を通して、主張が一貫していなければなりません。1科目80分ですが、あれこれ悩んでいるとあっという間に時間がなくなります。時間内に問題文全体を見渡して、克服すべき課題を把握し、適切に解答を作成することが必要です。
7.中小企業診断士の仕事
a.経営診断・指導や助言(公的機関と連携して経営診断や指導や助言を行うもので、中小企業診断士の中心的な仕事です。)
公的診断・指導や助言
都道府県や市町村、中核的支援機関、商工会議所、商工会、地域情報センター、中小企業団体中央会等の支援事業を受託して担当します。
一般企業の診断および指導や助言
民間企業から直接(あるいは中小企業支援センターなどを通して)依頼を受けて、コンサルティングを行います。
b.各種講演やセミナーの講師(各種講演会やセミナーなどの講師を務めます。)
・経営者向け、経営管理者向けの講演会や研修会、セミナー
・従業員や新入社員向けの講習会
・新規創業者やベンチャービジネス向けの研修会
・商店街の活性化や街づくりの講演会
c.調査・研究(各業界や地域の実態、マーケティングに関する調査などを行います。)
ちなみに、私はまだ経済産業省大臣への登録を済ませていませんので、正確には「中小企業診断士」にはなっておりません。2月から始まる実務補習を受けなければならないのでした。(^^)