いい面の皮

 これは、ある会社(A社)のお話です。
 A社は大会社であるB社に十数名の人材を派遣しています。B社では近頃セキュリティの強化を図るために、派遣会社の社員に対しても個人識別用のICカードを発行することになりました。ICカードに写真を貼り付けるために、A社は派遣している人材の顔写真を提出しなければならなくなりました。
 A社は最初、従業員に個別に写真を撮るように指示しました。ところが、経費節減のためだか何だか知りませんが、自社の名札に使っている従業員の写真を使うことに方針を変換しました。(証明写真は一人当たり¥500~¥800くらいしますからね。)でも、その写真はデジカメで撮ったスナップ写真のような感じのもので、背景に人が映っていたり、ピントがぼけていたりします。その上、画素数が粗くて、とても証明写真としては使えない代物です。(そんな写真を名札に使用しているA社もA社だと思いますが・・・)
 写真を提出するときに、それを見せてもらいましたが、素人目にも「これはだめなんじゃないかな。」と思われるものでした。
 A社は、写真を添付した書類を昼一に提出したのですが、夕方になって書類が戻ってきました。案の定、「だめだし」を食らってしまったというわけです。
 そもそも、写真を撮る話が持ち上がったのが年末で、手製の写真の作成が昨日(1月5日)、提出したのが今日(1月6日)、締切が今週末(でも、早めに出してくれと言われていた)という厳しいスケジュールなのです。そして、出来上がりがどんなものなのか確認もせずに、ただ経費を節減したいためだけの安直な考えで、方針を決定する思考力のなさ。クレームがA社の上層部にまで行ったそうです。「よくこういう下らないところで客先(B社)とトラブルになりますよね。」
 今日一番かわいそうだったのは、A社のサブリーダーです。彼は自分自身もB社に派遣されているのですが、今日はB社のお偉いさんに平謝りでした。彼自身は、安直に名札の写真を使うことに反対していたのですが、上司の命令で仕方なく書類を提出した張本人です。
 上司の責任の尻拭いをさせられて、彼こそいい面の皮でした。