昨年暮れの話ですが、自動車メーカー大手の「HONDA」が米国で、ビジネスジェット実験機の飛行試験を行ったというニュースがありました。「Hondaビジネスジェット実験機の飛行試験を開始」
まず、ビジネスジェット機の市場の話から。
ビジネスジェット機の市場規模は、北米を中心に今後10年間で8000機~10000機程度と予想されています。何と言っても、米国はその広大な国土を移動するのに航空機の利用は欠かせません。ビジネスジェットはその名の通り、企業のエグゼクティブが移動するために使われるのですが、近頃米国航空局(FAA)が発表した「小型航空機輸送システム(SATS)」構想によってその可能性は大きく広がりました。それは、全米に600ある空港と他に約10000存在すると言われる管制設備のあまり整っていない離着陸場を使って、より利便性の高い航空輸送を実現しようというものです。実際、米国では、この市場をターゲットに多くのベンチャー企業が興っているようです。
もちろん日本でも、より低燃費のビジネスジェット機が登場すれば、本島と離島とを結ぶコミューター航空などに採用が広がるでしょう。
ホンダでは、創業者の故本田宗一郎氏が「航空業界への参入」をずっと掲げてきていました。ここにきて、ホンダがビジネスジェットの市場に参入するのは自然の流れだったのかも知れません。
この機体、「HondaJet」と呼ばれていますが、その外観上の最大の特徴は、主翼の上にエンジンを搭載していることです。
ジェット機のエンジンの位置と言えば、主翼の下に吊す、機体尾部に横に突き出す、或いは、垂直尾翼を貫通する、などが挙げられます。
エンジンの位置は、揚力を発生させる主翼に取り付けるのが、強度上もっとも理にかなっていると言われます。後退角を持つ主翼は、飛行時はねじれのモーメントを発生させます。機体尾部にエンジンを配置すると、その重量によるモーメントと主翼が発生するモーメントが主翼の付け根に集中します。そのため、強度を上げる必要があり、構造材の重量が増加します。
大型の航空機であれば、翼の下にエンジンを吊すことも考えたでしょうが、今回のような小型機では、主翼下に十分なクリアランスがありません。というわけで、翼の上に持ってきたのですね。
確か、英空軍のライトニングという戦闘機が、翼の上に増槽タンクを装着していましたが、それに勝るとも劣らぬユニークな格好です。
この「HondaJet」の特徴は以下のようなものが挙げられています。
・(先ほどの独自のエンジン配置により)構造材が機内(キャビン)を圧迫しないため、キャビンは広く確保することができる。
・主翼が自社開発の層流翼型である。(抵抗を軽減)
・ノーズ部分も層流を発生させる形状である。(抵抗を軽減)
・一体成型の複合素材胴体である。(重量を軽減)
・アルミ製の主翼(重量の軽減、加工の容易性)
・グラスコクピット
・独自開発のエンジン
これらにより、従来の同クラスの航空機に比べて格段の燃費向上を実現したとあります。
さて、この「HondaJet」の最大のライバルとなるのは、「エクリプス500」という飛行機です。(こちらはオーソドックスなデザインですね。)
話によると、エクリプス500はすでに2000機の契約を取り付けているとか。しかし、ホンダには「HONDA」というブランドがあります。SATSにより生まれた多くのベンチャー企業に比べて、このブランドは非常に大きいです。このブランドに性能や信頼性がついていくか、ホンダのがんばりが期待されます。
また、国内でも、実際に飛行しているところを見てみたい!!是非、この航空機を実用化してください。そして、国内の民間航空会社、コミューター航空のみなさん、そして、自衛隊のみなさん、この航空機が実用化された折には是非採用してください。m(__)m