週刊東洋経済2004年02月14日号

特集
ロングセラー商品の秘訣
こうすれば、長く愛される

 身の回りにあるロングセラー商品の秘密に迫る特集です。こういった特集は読みやすいですね。

 ロングセラー商品には共通した何かがあるということです。それは、「コアベネフィット」です。
「コアベネフィット」とはその商品が消費者に与える中核的な便益・価値のことです。

 ロングセラーになるためには、何よりもこのコアベネフィットを明確にすることが必要です。そしてかつ、それが消費者に指示されなければなりません。さらに、他社の商品とのあいだで繰り広げられる厳しい競争に勝つには、他社の製品とここが違うということを明確に打ち出さなければなりません。この差別化ができなければ、やがては類似品、追随品に取って代わられる運命です。

 さて、その一方で、消費者の嗜好や市場環境は変化していきますので、その変化に対して柔軟に対応しなければなりません。

 今回取り上げているのは、「カップヌードル」、「ポカリスエット」、「スーパーカブ」、「ザ・ビートルズ」、「バーバリー」、「G-SHOCK」、「南天のど飴」、「レゴブロック」などです。

 カップヌードルは、発売以来32年以上を経過しています。その販売累積が200億食を突破しました。カップヌードルの場合、その最大の悩みは、「変化が許されない」ということにあります。味が変わってしまうと、今まで選択し続けてくれたロングユーザーが多いとのこと。しかしまた、それでは新しいユーザーの開拓に手間がかかることになります。そのために、時代に先駆けるということをイメージにした宣伝を行っているそうです。確かにTVのCMを見ると、斬新さが見られますね。食事しているシーンはあまりなくて、CGを使った目を引くものばかりです。

 ポカリスエットは、人間に必要な水分の補給のための飲料として長いあいだ支持されてきました。ポカリスエットのロングセラーの秘密は、地道な販促活動と製薬会社であることの自負に他ありません。小中学校などに赴いては運動中の水分補給の重要性に関する講演を行ったり(それも極力商品の宣伝は抑えて)、飛行機を飛ばして血栓予防効果のあることを実験したりしています。こういった活動はCMなどに比べてすぐに効果が現れるわけではないのでしょうが、この地道さがこそがこの商品の強みだったりするのでしょう。

 スーパーカブといえば、新聞配達などでおなじみです。これも最初のモデルが発表されてから46年を超えているそうです。私なんかが生まれる前から走っていたのですね。現在のスーパーカブはエンジンがOHVからOHCに変わったくらいで基本的なデザインはそのままです。このバイクがなぜ支持されているのかというと、やはり「顧客の視点に立った設計コンセプト」であることでしょう。未舗装路の走破性のために17インチのタイヤを新たに作成したり、燃費や騒音を克服するために4ストロークのエンジンを開発したりしています。

 ザ・ビートルズときて、今までの商品とは少し毛色が違うかなという感じも受けましたが、これも今売れているのですね。ザ・ビートルズというものをひとつのブランドとしてとらえ、それを効果的に露出(宣伝広告などで)して消費者に訴求しているのでした。私もついつい買ってしまおうかなと思っています。

 バーバリーのブランド品は、私もいくつか持っています。自分から選択したわけではなくて、何かのときのプレゼントとかで贈られることが多いです。バーバリーの戦略は、「安売りせず、店舗数も絞り、ステータス維持に努める」ということらしいです。ブランドのイメージを守るということですね。一度傷ついたブランドは立ち直れないという考えが、その根底にあります。

 G-SHOCKは、私は残念ながら持っていません。ちょっと大きいかなと思っていまして・・・。このG-SHOCKはフリーペーパーを利用して、「かっこいい人が」G-SHOCKを身につけていることを若者達に訴えました。このフリーペーパーによる戦略が奏功し、G-SHOCKは若者達のあいだに口コミで広がっていきました。しかし、これはブームであって一時的なものです。次に打ったのは、20代後半をターゲットにしたタフな男が身につけるものというイメージ訴求です。消防士を使ったCMなどにそれが現れています。ソーラー+電波を搭載した製品も好調だそうです。そもそも、カシオの戦略は高級ブランド志向ではなく「実用性」にあります。G-SHOCKはまさにそれだという感じがしますね。

 南天のど飴は私の子供のころからあまり親しみがなく、今回の商品群の中でも「最も知らない」商品です。南天のど飴は最初食品として扱われていたのだそうですが、途中の法改正により「南天実エキスを食品として使ってはいけない」ことになったそうです。また、南天実エキスは医薬品としての使用も認められず、まさに八方ふさがりの状態になりました。結局、発売以来クレームがないことを盾にした3年越しの陳情でやっと特別承認をもらって再発売にこぎつけたということらしいです。なかなか順風満帆にはいかないものですね。

 レゴブロックは、子供のころから親しみました。当時、ダイヤブロックとレゴブロックを持っていて、お互い組み合わせることができないことに不便さを感じていました。私は「ダイヤ派」だったのですが。でも、レゴブロックが商品のブロックを組み合わせて大きな町並みやつり橋を作っているのを見せられて、胸がときめいていました。
 レゴブロックは近頃の子供達のように遊ぶおもちゃがたくさんある世代の子供にはあまり興味を与えなかったのでしょうか。そこで、戦略を全面的に変えて、テレビのアニメ番組の放映時間などに積極的にCMを流すようにしました。また、子供が見る雑誌などにも広告を記載しました。効果はてきめんです。これによって、売上高は激増しました。
 レゴブロックは、一方で、知育玩具としての立場を放棄したわけではありません。これを具現化するために、レゴミュージアムなどのテーマパークを積極的に展開しています。

 これら、ロングセラー商品に共通しているのは、「発売当初から変わらない」という点です。もちろん、その後の技術革新によって、製法などは変わっていますが、商品そのものはほとんど変わっていません。それは、発売当初からその商品の「完成度が高かった」からに他ありません。それは最初に商品を作るときに「消費者のことを考えた」ことによるものでしょう。

 ロングセラーになるためには、発売時にまずある程度売れなければなりません。最初に売れなければ、そこで生産中止となってしまうのですから。「あのときのあの商品、今だったら売れるのにな。」ではだめなのです。そして、その販売数が持続されなければなりません。そのためには、コストダウンなども必要でしょう。市場の変化に合わせた改良も必要になるかもしれません。でも、それはあくまで「その商品のコンセプトを維持しながら」の改良でなくてはならないのです。そうでなければ、時代に流されて、他の類似商品の後塵を拝すことになってしまいます。

 ビジネスの世界でも、このロングセラー商品から学ぶことは多いですね。