日経ITプロフェッショナル2004年03月号

特集1

あなたのキャリア形成を左右する

ITスキル標準

最前線を追う

 ITエンジニアのスキルの標準を定めたITSSですが、普及が促進されています。ITSSというのは、ITエンジニアの職種を11の職種・38の専門分野に分類し、それぞれに必要なスキルを定義しました。この定義により、ITエンジニアのキャリアパスは今自分の持っているスキルとこれから身につけるべきスキルとがわかり、企業にとっては自社や取引先のレベルがわかるというものです。
 これまで、とかくITエンジニアというもののスキルは不明確でした。仕事を発注する側も受注する側もどの程度のスキルを持った人間がどのくらい必要になるのかというのがわからないまま仕事を行っていました。また、ITエンジニアのスキル向上はもっぱら現場で鍛えるだけのOJT中心でした。それも、本人が何を学んでいけばいいのかわからず、企業も何を目指しているのかわからない状況でした。
 こうした中で、欧米に習ってITSSが導入されました。このITSSは中堅以上の企業においては人材の育成に役立てている場合が多いようです。ITSSによって企業も自社のITエンジニアに対してキャリアパスを提示しやすくなったのではないでしょうか。
 しかし、キャリアを認定する仕組みはまだ各企業に任されているのが現状です。つまり、極端に言えば、ある企業が「うちは、ITSSのこの職種のこのレベルの人間がこれだけいる」といえば、それを外部から検証する方法はありません。このITSSを本気で活用しようとすれば、経験としての実務のほかに、試験による認定など客観的に認定する仕組みが必要になります。
 ITSSは、今後経済産業省の情報処理試験や各種ベンダーの行っている試験と連携して、客観的な認定を行える仕組みを設けるという話も聞いています。が、実現はまだ先のようです。
 企業の評価制度としては、ITSSは着実に浸透しているようです。なによりも、透明性を高めることができますので、従業員の納得度を上げることができます。自分が今後何を身に付けたらどのくらい給与が上がるのかがわかりやすくて維持できるようになりました。従業員のモチベーション向上にも一役買っています。
 この記事では、最後にITSSの限界?についても述べられています。ITSSは所詮テクニカルスキルです。ビジネスパーソンに求められているのはそれだけではありません。ヒューマンスキルも大事です。という話です。それは、行動特性とでも言えばいいのでしょうか。単に技術論だけで、「それはできません」とけんもほろろに顧客の要求を突っぱねるような人では、いくらテクニカルスキルが高くてもだめでしょう。顧客の立場に立った代替案を提案できるようでなければ、顧客の信頼は得られないでしょう。このような、「コアなスキル」は決して難しいものではありません。顧客の立場に立って物事を考え、建設的に話ができれば、だんだんと身に付いてくるものでしょう。
 というわけで、日経ITプロフェッショナル2004年03月号の第1特集でした。