USエアウェイズのA320がハドソン川に不時着水

<旅客機不時着>NYの川、155人全員救助 エンジンに鳥
1月16日8時33分配信 毎日新聞

 【ニューヨーク高橋秀明】15日午後3時半(日本時間16日午前5時半)ごろ、米ニューヨーク市のラガーディア空港を離陸直後のUSエアウェイズのエアバスA320型国内線旅客機(乗客150人、乗員5人)が、同市中心部のマンハッタン西側を流れるハドソン川に不時着水した。機体は川に浮いた状態となり、ニューヨーク市消防当局や沿岸警備隊が救助船を派遣。USエアウェイズ社は約1時間20分後、乗客乗員全員が救助されたと発表した。

 在ニューヨーク総領事館によると、同機には堺商事ニューヨーク社の滝川裕己(ひろき)さん(43)と出口適(かなう)さん(36)の日本人男性2人が搭乗していたが、無事が確認された。乗客の一部が病院に搬送されたが、消防当局によるといずれも軽傷で重傷者はいないという。

 米連邦航空局(FAA)などによると、同機はノースカロライナ州シャーロットに向けて午後3時26分に離陸。45秒後、高度約500メートルの上空で、機長(57)が管制当局に「両翼のエンジンが鳥を巻き込んだ」と連絡した。

 エンジンから火と煙が出たため、機長は緊急着陸を要請。管制当局は近くの空港への着陸を指示したが、同機はハドソン川に不時着水した。

 機体はほぼ損傷がないまま着水しており、通常の着陸に近い滑らかな着水だったとみられる。米CNNテレビによると、機長は「ノー・エンジンで降下するので、衝撃に備えて」と乗客にアナウンス。FAAは2機あるエンジンの両方が停止していたとみて調べている。

 現場は01年の同時多発テロ事件で旅客機が突っ込み崩壊した世界貿易センタービルから数キロの地点。マンハッタン市街地に降下すれば大惨事となるところだった。機長は十分な川幅があり、橋などの障害物がないハドソン川に機体を導き不時着水したとみられる。機長は操縦歴約40年のベテランで、米空軍のF4戦闘機のパイロットを務めた経験もある。

 事故当時のニューヨークの気温は氷点下6度前後。着水後、乗客らは両翼の上に移動するなどして救助を待った。救助後、同機は前方部を残しほぼ水没し、記者会見したニューヨーク州のパターソン知事は全員救助を「奇跡だ」と語った。
(Yahoo!ニュースより)

 今朝は朝起きてからニュース番組が変だなと思っていたら、案の定大きな事故が起こって編成が変わっていた。ということで、USエアウェイズの事故についての話である。なお、機体がほぼ無傷で着水し、乗員乗客全員も救出されたことから、墜落といわずに不時着と表現することにする。

 事故の原因について

 飛行中にエンジンが鳥を吸い込んだことによるエンジンの出力低下、停止、出火が原因と言うことである。鳥の衝突(バード・ストライク)は特に飛行高度が低い場合に発生する危険が増大し、今回のようにエンジンに重大な損害を与えたり、機体の外板などを破損させたりすることが多い。特にその破損が飛行に重大な影響を及ぼす風防(キャノピー)やエンジンに関しては、実際に鳥を高速で衝突させるなどの強度試験を行っている。私が聞いた話では、特にエンジンのバード・ストライク試験では、衝突させる鳥が、死後時間が経ったものであれば死後硬直などにより肉の固さが変わるというので、殺す時間も考慮して衝突させていたと言うことであるが。そして、その上でエンジンのファンブレードがエンジン外に飛び出さないような強度を持っているか確認していたと言うことであった。
 今回、物理的に離れた位置にある2機のエンジンが同時に停止したこと、そして両エンジンとも致命的な損傷が発生して出力が低下し、不時着に繋がったことを考えると、大きな鳥の群れに突っ込んだのではないだろうかと推測される。また、離陸直後でエンジンがフル回転していたと考えられ、そのためダメージが大きかったとも考えられる。

 不時着について

 パイロットが元空軍のベテランパイロットだったということも、不幸中の幸いであった。EMT(Emergency Maneuver Training)という言葉があり、故ロック岩崎さんなどが盛んに啓蒙していたのであるが、非常事態において機体を安全に制御するための訓練という意味である。例えば、飛行中に突風で機体が上下逆になってしまうようなとき、一般のパイロットであれば普段背面飛行をする機会があまりないのでパニックになり、機体をもとの状態に戻すのに時間がかかったり、最悪墜落してしまうこともありえる。つまり、EMTとは機体がどのような状況に陥っても慌てず騒がずもとの状態に戻すことが出来るようにする訓練のことである。こういった訓練は戦闘機パイロットは日常的に行っているのだが、民間機パイロットはなかなか出来ていないようである。もともと大型機が激しい機動飛行をすることなどあり得ないのだから。

 今回、パイロットが元空軍のパイロットであり、冷静に対処できたことは乗客乗員が全員救出されることに繋がった重要な要素であると考える。

 ニューヨークで航空機事故があったと聞くとすわテロかと思ったが、今回はそうではなかった。機体を初め多くの人が資産を失ったが人命が失われなかったことは不幸中の幸いである。

2009年1月16日 | カテゴリー : ニュース | 投稿者 : assak