PBを展開中の流通業は下請法の適用を受けることがあるという話

下請法とは
 一般に仕事を発注する側は大きな企業であり、その仕事を受注する下請側は小さな企業である場合が多い。この場合、大きな企業はその強い立場を利用して、下請側にとって不利益となる条件を強要することがある。例えば、納品が完了した後でも支払いを遅延させるとか、製造やサービスを発注した後に、発注金額を値引きさせるとか、追加で条件を出すとか、当初の予定外の業務をさせるとか、などなどである。
 立場の弱い下請側は、発注側の要求に応じざるを得ないことが多い。そこで、下請側を保護する目的で創設されたのが、下請法(下請代金支払遅延等防止法)である。もちろん、下請の下請、つまり孫請け会社でも、下請と孫請けとの大小関係が下請法の規定に沿っていれば、下請法の対象となる。
下請法の対象となる資本の規模
 委託者と受託者(発注側と受注側、元請けと下請、下請と孫請け)の資本金の大小で、適用が決まる。

委託者の資本金 受託者の資本金
製造委託の場合
3億円超え 3億円以下
3億円以下で1千万円超え

1千万円以下
情報成果物または役務の場合
5千万円超え 5千万円以下
5千万円以下で1千万円超え 1千万円以下

 ※超えというのは、数学で言うところの「>」の意味で、以下というのは、「≦」の意味である。また、情報成果物というのは、ソフトウエアのプログラムや、脚本、音楽など著作物のことであり、役務というのはサービスのことである。
下請法の対象外となるようなもの
 弁護士などの顧問契約、成果物責任を問われないような委任契約、派遣契約などは下請法の対象とはならない。もちろん、一般取引を規定した民法、商法、派遣であれば派遣法の適用を受けるのは当然であるが。
PBを展開中の流通業と下請法
 ここで、最近問題になっているのが、プライベート・ブランド(PB)を扱っている卸売、小売業者に関してである。彼等は仕入れた品を流通・販売させているだけであれば、当然ただの流通業者に過ぎないが、PBを企画し、メーカーに製造を依頼しているのであれば、それは下請法の委託者ということになり、下請法の適用を受けることになる。ここ最近、下請法違反として公正取引委員会が違反した企業名を公表している。その中には「はるやま」「ダイソー」といった大手小売業の名前が挙がっているが、これらは自社のPB製造委託に関して、その取引が下請法違反とみなされている例である。彼等に故意、すなわち悪意があったのかどうかはわからないが、自分らが製造業に当たるという意識が希薄で、意識することなしに下請業者に対して不利益な条件を申し出た可能性もあるだろう。
 PBは「大企業のブランド品よりも安価でありかつ品質が良い」というブランドイメージを構築できれば、小売業にとって大きな武器となる。そのため、各社ともPBの開発に熱を入れているが、思わぬところに落とし穴があるということに注意して発展させてもらいたいものだ。

2012年4月17日 | カテゴリー : ニュース | 投稿者 : assak