今週のカンブリア宮殿

 一方、今週のカンブリア宮殿はおもしろかったな。
 タイトルは【奇跡の構造転換で復活!「攻め」の経営とはこういうことだ!」】ということで、富士フィルムの話。村上龍が「自動車が売れなくなったトヨタ」と語っていたが、フィルムカメラの凋落により主力事業を失う中、多角化により生き残ったというところを紹介していた。
 多角化の代表的なものは、
 ・化粧品
 ・画像処理によるがん診断
 ・液晶FPD用のタック・フィルム
などである。
 いずれも、既存の銀塩フィルムを作ってきた技術やその関連技術をベースにしたものであり、新規のものではないと言うことである。化粧品は乳化剤を作るナノ技術をベースとしており、画像処理は画像処理、タック・フィルムはフィルム作成技術をベースとしている。
 液晶用のタック・フィルムに関しては、液晶パネル業界で世界規模の奇美(チーメイ)関係者が出てきて、富士フイルムを絶賛していた。
 異色と言えば化粧品だが、そのCMもおもしろかった印象がある。確か正月に見たバージョンでは、フィルムのCMでおなじみの樹木希林さんや松田聖子さんが出てきていたので、最初は毎年恒例のお正月バージョンのフィルムや写るんですのCMかと思ったら、そこから化粧品の紹介に移行したので強く印象に残っている。これはどっきり感をあおって視聴者に富士フイルムの多角化を印象づける効果としては抜群に奏功していると感じた。
 その他にも、関連分野の他社との合弁企業を作ったり、M&Aを仕掛けたりと、飽くなき挑戦は続いている。
 新しい研究施設も竣工していて、技術力で生き残っていこうとする同社の強い意志を感じた。
 その研究所のシンボルが「梟」であって、それはヘーゲル(法の哲学)の言葉「ミネルバの梟は黄昏に飛び立つ」から採ったものだという。この言葉は浅学のため知らなかったので、調べてみた。
 ミネルバ(ローマ神)はアテナ(ギリシア神)とも呼ばれ、知性と学問の神である。また、梟は知の象徴である。梟はその日のことが未だ分からない朝方はじっとして飛び立たないが、夕暮れになってその日のことがすべて終わるとやっと飛び立つという。その意味するところは「真の認識というものは一つの時代の没落が始まるときにこそ獲得できる」ということらしい。
 現在のように将来が見通せない混迷の時代こそ知性のあるものの時代だという自負とその知の修練を怠ってはいけないという戒めを表したものかなと思う。