カンブリア宮殿(2012/06/28放送分)

放送300回記念特別企画ということで、日本航空の再建の話。
で、稲盛氏がゲストとして登場。
稲盛氏がJALに対して行った改革を解説していくというものだが、番組で紹介された手法は京セラでやっていた経営手法の焼き直しだった。JALに特化した経営手法を行ったわけではなかった。「アメーバ経営」も出てきたしね。真新しさを期待したのだが、それは無し(というか非公開だったのかも)。
JAL再建の最大の障害は、幹部の官僚意識だ。親方日の丸の放漫経営と言ったら言い過ぎかも知れないが、それに近いものがあった。稲盛氏もそこのところは強い危機感を持って意識改革にあたっていったようだ。
ということで、過去最大の営業利益をたたき出しちゃったと言うからすごいね。JALは「水が滴る雑巾」みたいなものだから、絞ればいくらでも絞れると言った感じだ。
以下に番組で紹介された改革
・JALフィロソフィと呼ばれる冊子
・部門別採算制度では670もの単位に組織を細分化して、それぞれで収支管理。
・便ごとに売上と経費で収支管理をさせる(従前は路線ごとの収支管理)
・日々決算(従前は一月後に収入が分かる)
・予約状況に合わせて機材を柔軟に変更
JALの社員が考えを一つにするフィロソフィを設けること、組織をアメーバにすること、収支の単位を適切な粒度で管理すること、日ごとに売上を計算させることなどは、稲盛氏の既出のやり方そのままだね。JALでは今までそれをやってこなかったということだろう。
2010年に稲盛氏が火中の栗を拾ったときに、否定的な意見が多かったような気がする。かくいう私も、製造業とサービス業の違いや、そもそも何十年もかけて社員に浸透させてきたフィロソフィを数年で植え込むことができるなど無理だと考えた。でも、稲盛氏はそれをやったんだよね。確かに浸透度はまだまだ足りないかも知れないが、結果を出していることには間違いない。改めてすごいなと思う。
番組後半は787の導入時の話だったが、それは割愛。

松下幸之助氏、本田宗一郎氏、盛田昭夫氏など昭和時代の伝説の経営者はほとんど亡くなってしまったが、稲盛氏はその最後の生き残り。
航空業界はLCCの台頭を含めて今後も荒波がおそうことが必至。稲盛後のJALがその荒波を乗り切れるかどうかはまだ未知数。破綻後の企業の再上場としては最短を更新するのではないかと思うが、再上場しても前途は多難である。
さすがに稲盛氏の企業人としての役割は今回が最後かな。彼の次の世代の経営者だとずいぶんと年齢が離れているな。やはりあの人かな、あの人しかいないかな。