先日行われた中小企業診断士の一次試験にクラウドについての問題が出題されていたので、今更ながらクラウドに関して整理をしてみた。
そもそもクラウドとは
システム設計でネットワーク構成図を描く際にインターネットを「雲(クラウド)」の図で表現したことから、インターネットを利用して各種のサービスを提供する仕組みのことをクラウド(サービス)と呼ぶようになった。
ネットワーク環境の普及と高速化、各種情報端末(ノートPC、スマートフォン、タブレット)の高性能化を背景に注目されている技術・分野の一つである。
クラウドを利用する目的は、
・ビッグデータに代表される大規模なデータを高速で処理するインフラストラクチャーなどをリモートホスト・サーバで処理することによる手元端末の負荷軽減や通信料削減(手元端末の(比較的)非力なCPUで処理するよりも高速短時間で処理が完了する、または膨大なデータを手元端末に転送することが不要になる)
・情報端末の紛失、盗難時のセキュリティ対策やデータ喪失によるBCP対策
・いつでもどこでも(ネットワークのつながる場所であれば)各種の処理や検索が出来る
ということなどが挙げられる。
このように、普及が進むクラウドについて中小企業診断士の一次試験で出題されたのは「中小企業・小規模事業者」のビジネスシーンにもそろそろ使われ出したと言うことかな?!
クラウドの各種サービスの違い
- SaaS
(Software as a Service)の頭文字をとったもので「サース」と発音する。
これまで、コンピューター上で動作するアプリケーションソフトはパッケージとして提供され手元のPCのHDDなどにセットアップされ動作していた。アプリケーションが動作する資源(CPU、メモリーなどは)手元のPCのものが消費されていた。これに対してSaaSでは、ネット上のリモートホスト・サーバ上で実行されるアプリケーションのヒューマン・インターフェースを手元のPCにて実現するものである。一般的にはアプリケーションの動作に必要なデータ類もリモートホスト・サーバ上の記憶装置に保管される。
SaaSの特徴としては以下のようなことが挙げられる。
・手元のPC(タブレット、スマートフォンなど)のCPU、メモリーなどの性能に影響を受けない(画面表示のみを実施するものであるため)。一般的にはリモートホスト・サーバの性能・能力にてアプリケーションが稼働するため、高速に動作する。
・複数のPCなどからアクセスすることが出来る。
Google Appsなどが代表としてあげられる。 - PaaS
(Platform as a Service)の頭文字をとったもので「パース」と発音する。
SaaSよりも下位の概念でありアプリケーションが動作するために必要なミドルウェア(DBなど)やその他のツール類をリモート上で提供するものである。対象のアプリケーションは手元のPC上で動作し、データへのアクセスやその他何かの処理を実施する際にリモートホスト・サーバに処理を依頼するものである。リモートホスト・サーバは、ネットワークを介して処理の要求を受けると一連の処理を実施し、その処理結果を再びネットワークを介して要求元に返送するものである。いわばネット上にAPI(Application Program Interface)が存在するものである。
Microsoft AzureやGoogle Apps Engine などが代表としてあげられる。 - IaaS
(Infrastructure as a Service)の頭文字をとったもので「イァース」と発音する。
情報システムが動作するために必要なハードウェア(仮想サーバなど)のインフラストラクチャーをリモートホスト・サーバ上で提供するものである。CPUの割り当て(能力)やネットワークの帯域(通信速度)などの性能を選択することが出来るほか、サービスの負荷状況に応じて性能を変動させることが出来るサービスも存在する(これらにより、利用者はクラウド利用の繁閑に応じて利用金額を最小化することが出来る)。
Amazon Elastic Compute CloudやGoogle Compute Engineなど代表的なサービスとしてあげられる。
クラウドの利用
というわけで、我々も知らず知らずのうちにクラウドの恩恵にあずかっていると言っても過言ではない。
先の九州北部豪雨では、現地の事業者の事務所が浸水してPCが水につかり顧客情報を喪失してしまったという事業者もいる。高価な機械設備の損壊は事業にとって大きな影響を受けるものであるが、買い直せばなんとかなる。しかしながら顧客データは喪失してしまったら買い直すことは出来ず、事業の継続に非常に大きな影響を与えてしまう。BCPの面からも、クラウドの利用は重要になってくるかも。