[受託システム開発] 工事進行基準は廃止へ、受託ソフトの会計処理に新基準!!

「収益認識基準」の草案が公開になり、受託開発ソフトの請負会社などの会計処理は当該基準に沿った運用となる。それに伴い受託開発ソフトで適用されている工事進行基準は廃止になる見込みとなった。

2009年以降、受託開発ソフトの売上計上処理は「プロジェクト収益総額、プロジェクト原価総額が明らかであり、決算日におけるプロジェクトの進捗具合を信頼性を持って積算できる」場合には工事進行基準を採用することになっている。
それ以前は「工事完成基準」の適用が行われており、発注者が開発システムを検収した時点で収益と原価を一括して計上する方法が採用されていた。

工事進行基準は、受託開発ソフトに対しては2009年から適用が始まり、大手IT中心にプロジェクトの進捗具合によって売上高と原価を計上する方法が採用されている。

そもそも工事進行基準は、受託開発ソフトの請負業者の財務状況を正しく把握するために採用された。工事完成基準の場合は、進行中のプロジェクトの原価は比較的大規模なシステム開発(決算をまたぐような数ヶ月にわたるプロジェクト)において決算日における当該プロジェクトに係る労務費等を未成工事支出金として処理してきた。これは費用側の算出は可能であるが売上は不明のため、当該企業の業績の正確な把握が難しいという問題点があった。一方で、工事進行基準では、売上と原価がともに進捗具合に応じて計上されるので、当該企業の業績が正確に反映できるというメリットがある。

しかしながら、建設業のように完成へのプロセスが明確で工事の進捗度を正しく把握できる場合は良いが、ソフト開発の場合などプロジェクトの完成が把握しづらい場合は本基準の適用が難しい。

実際、公認会計士による会計監査が義務づけられているような大手ITベンダーや、上場を目指している企業を除く中小のベンダーでは、工事進行基準を採用しているプロジェクトは極めて少ない(法人税法上、工事進行基準の適用が義務づけられているプロジェクトを除く)。

したがって、今回の基準の変更は、ITベンダーの実態に基準を合わせた結果といえるかも知れない。

日経システムズ 2017年09月号より