JR九州は新幹線を活用した物流事業への参入検討を始めた。九州新幹線(博多-鹿児島中央)の既存ダイヤと車両を活用、乗車率の低い便で乗客と貨物を同時に運ぶ。2019年には宅配事業者などとの調整を開始、駅や車内での作業内容などを確認した上で、一定の採算性が見込めれば事業化する。物流業界で人手不足が深刻化する中、新幹線を活用して収益向上につなげる狙いだ。
2019/1/1、西日本新聞より
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新幹線の高速性を活かした貨物輸送ということで、過去には東海道新幹線でも検討されたことがあります。その際は確か貨物専用車両を開発して新幹線の路線を走らせるということだったと記憶しています。しかしながら、東海道新幹線は日中のダイヤがいっぱいいっぱいで、これ以上の増便は見込めないし、だからといって旅客便を減便したくないという思惑から実現されなかったと訊いています。つまり、東海道新幹線は単価の高い旅客輸送に特化した方が収益性が良いということです。16両のフル編成で隙間なくダイヤを組むことが、東海道新幹線のビジネスモデルということになります。
一方で、九州新幹線はダイヤにも余裕があることはもちろんですが、乗車率も東海道新幹線より低いということで、6~8両編成のうちの1両を貨物専用にして軽貨物を運送させるということは理に適っているということです。
新幹線の高速性を活かせば、軽貨物を博多駅、鹿児島中央駅、1時間半程度で運ぶことができます。もちろん積み降ろしの時間などの時間も考慮しなければなりませんが、人手不足対策や、環境対策の面でも有効かと思います。
さて、九州新幹線では、博多~鹿児島間が1時間半程度となりますが、トラック輸送ではどのくらいかかるでしょうか?一般のトラックが九州自動車道経由で貨物を運ぶ場合、だいたい3時間半程度の時間がかかるはずです。そうなると、時間的なメリットは2時間程度となります。積み降ろしにどのくらいの時間がかかるのかはわかりませんが、30分だとすると積んで降ろして30分×2で1時間程度かかることになります。そうなると時間的なメリットは1時間程度となります。
時間的なメリットがこの程度だとすると、他のメリットとして人手不足対策と環境対策の面とでその有効性をアピールするところが事業化のための課題ということになります。
ところで、前述の通り東海道新幹線ではかつて成立しなかった貨物専用新幹線ですが、今後リニアモーターカーが実用化されると、事態は一変します。旅客輸送は中央リニアへとシフトし、東海道新幹線の乗車率やダイヤ、編成にも余裕ができるはずです。そうなると東海道新幹線の貨物編成が現実味を帯びてきます。東海道新幹線は2時間半で東京、大阪間を結ぶことができます。そうなると、トラック輸送よりも相当高いアドバンテージが与えられると思います。路線距離が長い方が当然メリットが出やすいです。東京大阪間のトラック輸送にかかる時間は8時間程度となります。これが2時間半であれば、5時間半のメリットとなります。
新幹線には、もっとも大きなデメリットがあります。それは、夜間に運行できないという問題です。騒音問題もありますが、夜間の線路保守、点検などが実施されるため、夜間の運行は難しいかも知れません。一方でトラックは夜間もバンバン走りますから、その時間帯で時間のメリットを稼ぐことができます。