日経システム構築2004年03月号

特集

内部崩壊する社内ネット

5つのシステム化で食い止めろ

 社内ネットワークは多くの企業で運用されています。この社内ネットワークが、世界規模で発生するコンピュータウィルスやワームによって機能不全に陥ってしまったり、社内ネットワークを通して社内の機密文書が社外に流出してしまったりするという問題を取り上げています。
 社内ネットワークは企業にとってもはやなくてはならないものになっています。しかしながら、一方でネットワークのダウンやネットワークを通した情報の流出など企業にとってのリスク要因にもなっています。この記事では、その防止策として5つの手法を取り上げています。この5つの手法を実施することによって、リスクを最小限にとどめようというのが狙いです。
 昨今、ネットワークを使った犯罪は増加の一途をたどっており、世間一般の関心は高くなっています。その中で、いったん企業内から情報が流出したら「セキュリティの甘い企業」としてのレッテルを貼られてしまうでしょう。そうなると企業の営業活動に多大な支障を来すことになり、最悪の場合はその存続さえ危なくなってしまいます。
 そういった現状を踏まえて、多くの企業では、セキュリティには十分気を使っています。それなのに、社内ネットの障害やそこからの情報流出が起きるのはなぜか、というところから記事は始まっています。
 その理由を簡単に言えば、
・安価なネットワーク機器を簡単につなげることができる。
・コンピューターを利用するユーザーの底辺が広がっている。
ことによる、セキュリティホールの発生ということになるかと思います。
 記事では、このことにより企業の社内ネットワークが「内部から崩壊」してしまうと述べられています。
 このことを踏まえて、いかにしてセキュリティを確保し崩壊を防ぐかという話ですが。私としては、???です。確かに、事例の企業ではそれらの対策が有効かも知れません。ですが、セキュリティ対策でもっとも大切なものが抜けているよ、という気がします。それは、社員に対するセキュリティの啓蒙活動とルールづくりです。啓蒙活動により社員の意識を高めるとともに、罰則を含めた厳しいルールを設けることにより、抑止効果を狙います。(いわばソフト的な対策です。)コンピュータシステムを用いたいわゆるハード的なセキュリティ対策なんて、破ろうと思えば所詮破られてしまうものです。まず、社員のセキュリティに対する意識を変える必要が大です。
 その後、そのソフト的な対策を補完するためのハード的な対策に向かうべきでしょう。ソフト的な対策はハード的な対策に比べてコストはかからず、効果は大きいはずです。
 でも、ソフト的な対策ばかり論じていては、コンピュータ雑誌の記事にはなりませんので、今回は、ソフト的な対策は当然施すものとしてその後のハード的な対策を紹介しているんだと好意的に受け取るようにしましょう。セキュリティを意図的に破るつもりはなくても、ヒューマンエラーによりセキュリティが脆弱になることもありますから、その対策としての記事だと受け止めることにします。
 で、この5つの対策です。
1.MACアドレスの認証とユーザー認証を利用する。
2.OSやアンチウィルスソフトのパッチが当たっていないマシンをネットワークにつなげないようにする。
3.2を補完するために、不的確なマシンに対して自動的にパッチを充てる仕組みを設ける。
4.インシデントの予兆を監視する仕組みを構築する。
5.すり抜け通信を遮断する仕組みを構築する。
 1は、ネットワークカードごとに一意に設定されているMACアドレスを利用して、登録されていないPCの社内ネットワークへの接続を禁止するとともに、ユーザー認証によって第3社のネットワークへの進入を禁止するものです。これによって、接続できるネットワークの区分けを行うこともできます。
 2は接続されたPCの脆弱性を検査します。システム管理サービスソフトウェア(System Management Services:SMS)などによって接続されたPCへのパッチの適合状況を把握し、基準を満たしていないPCをネットワークに接続できないようにします。
 3は、2で不的確とされたPCに対し、自動的に最新のパッチを充てる仕組みです。これを「検疫ネット」と呼ぶそうです。
 4は、早期発見早期対策と言うことです。不正なアクセスの可能性があれば、取り敢えずネットワークから遮断し管理者に通報するシステムを構築することで、被害を最小限に食い止めることができます。
 5は、ファイヤーウォールやプロキシサーバーをすり抜ける通信を監視する仕組みを構築することにより、データの社外流出や外部からの進入を防ぐと言うことです。SSLなどの暗号化通信にも対応した製品が出てきているようです。
 以上が記事の内容でしたが、例えば、派遣従業員が自社のネットワークに接続している場合、そのPCの所有者が派遣元だとしたら、そのPCに対するアンチウィルスソフトの導入などの強制力は・・・。こういったことは、事前に契約をきちんと結んでおかねばなりませんね。実際に今回大手プロバイダでおきた個人情報流出事件も社外の従業員が絡んでいると言うことらしいですし。
 つまり、結論としては、
・人に対する啓蒙活動
・企業間での契約
・ハード的な防止措置
の3要素が必要と言うことになるでしょう。

日経ITプロフェッショナル2004年03月号

特集1

あなたのキャリア形成を左右する

ITスキル標準

最前線を追う

 ITエンジニアのスキルの標準を定めたITSSですが、普及が促進されています。ITSSというのは、ITエンジニアの職種を11の職種・38の専門分野に分類し、それぞれに必要なスキルを定義しました。この定義により、ITエンジニアのキャリアパスは今自分の持っているスキルとこれから身につけるべきスキルとがわかり、企業にとっては自社や取引先のレベルがわかるというものです。
 これまで、とかくITエンジニアというもののスキルは不明確でした。仕事を発注する側も受注する側もどの程度のスキルを持った人間がどのくらい必要になるのかというのがわからないまま仕事を行っていました。また、ITエンジニアのスキル向上はもっぱら現場で鍛えるだけのOJT中心でした。それも、本人が何を学んでいけばいいのかわからず、企業も何を目指しているのかわからない状況でした。
 こうした中で、欧米に習ってITSSが導入されました。このITSSは中堅以上の企業においては人材の育成に役立てている場合が多いようです。ITSSによって企業も自社のITエンジニアに対してキャリアパスを提示しやすくなったのではないでしょうか。
 しかし、キャリアを認定する仕組みはまだ各企業に任されているのが現状です。つまり、極端に言えば、ある企業が「うちは、ITSSのこの職種のこのレベルの人間がこれだけいる」といえば、それを外部から検証する方法はありません。このITSSを本気で活用しようとすれば、経験としての実務のほかに、試験による認定など客観的に認定する仕組みが必要になります。
 ITSSは、今後経済産業省の情報処理試験や各種ベンダーの行っている試験と連携して、客観的な認定を行える仕組みを設けるという話も聞いています。が、実現はまだ先のようです。
 企業の評価制度としては、ITSSは着実に浸透しているようです。なによりも、透明性を高めることができますので、従業員の納得度を上げることができます。自分が今後何を身に付けたらどのくらい給与が上がるのかがわかりやすくて維持できるようになりました。従業員のモチベーション向上にも一役買っています。
 この記事では、最後にITSSの限界?についても述べられています。ITSSは所詮テクニカルスキルです。ビジネスパーソンに求められているのはそれだけではありません。ヒューマンスキルも大事です。という話です。それは、行動特性とでも言えばいいのでしょうか。単に技術論だけで、「それはできません」とけんもほろろに顧客の要求を突っぱねるような人では、いくらテクニカルスキルが高くてもだめでしょう。顧客の立場に立った代替案を提案できるようでなければ、顧客の信頼は得られないでしょう。このような、「コアなスキル」は決して難しいものではありません。顧客の立場に立って物事を考え、建設的に話ができれば、だんだんと身に付いてくるものでしょう。
 というわけで、日経ITプロフェッショナル2004年03月号の第1特集でした。
 

帰ってきた二式大艇

光人社の刊行です。

発刊されたのは1月初旬で、すぐに購入していたのですが、何かと忙しくて読む時間があまりありませんでした。m(__)m
表紙は離水するUS-1Aでした。
US-1Aは美しい飛行艇です。世界の女王とも呼ばれています。以前、テレビ番組で小笠原諸島父島沖に着水するUS-1Aの映像を見ましたが、青い海に白い機体が本当に美しかったです。
この本は、第二次世界大戦中に旧日本軍が使用した二式大型飛行艇(二式大艇)とそれを作った川西航空機(いまは新明和工業)のお話です。
二式大艇は戦後、それを接収した米軍に「世界の飛行艇の上に君臨する王者だ」と言わしめるほどの性能を持っていました。戦後残った最後の二式大艇は米軍に接収され米国本土に運ばれて展示されていましたが、日本国内での返還運動が結実して日本への返還が決まりました。返還された二式大艇は、しばらくは東京のお台場にある博物館に展示されていましたが、その後海上自衛隊への譲渡が決まり、最終的に海上自衛隊鹿屋基地に保存されることになりました。
(現時点ですでに鹿屋基地に展示されているかどうかは不明です。今年のエアメモのときに確認してみます。)
この世界に冠たる飛行艇、二式大艇を作った新明和は戦後、米軍の軍需物資などけれんな仕事で糊口をつなぎながら再び航空機の製造を手がけることを夢見ます。ところが、YS-11などの受注に立て続けに失敗します。
そんな中で、PS-1という、飛行艇の開発を受注することに成功します。新明和にとっては、得意の飛行艇です。そして、PS-1の後継である水陸両用飛行艇US-1へとつながっていきます。
この本は、エンジニアとして、荒れた海上での離着水を可能にする波消し装置などの各種技術の開発ストーリーの面白さと、診断士として、自分のコア・コンピタンスを持ち続けた企業としてのサクセスストーリーの面白さを両方兼ね備えていますね。
とにかく、「新明和といえば飛行艇」と言わしめるほどその技術は卓越しています。
そして、話はUS-1A「改」へと続きます。
現在飛行試験が続けられている「改」ですが、与圧キャビンの採用により高高度飛行が可能になったことやフライバイワイヤシステムの採用など、21世紀の飛行艇として新しく生まれ変わったといっても過言ではありません。
部隊に配備された暁には、必ず岩国に見に行きます。
というわけで、US-1A改にエールを送ります。「がんばって早く制式化されてね。」

「ゆきお」さん、コメントありがとうございます。
岐阜基地の南側にあるやつですね。実はまだ行ったことがないんです。一昨年岐阜基地航空祭に行ったときに航空宇宙博物館に行こうと思ったのですが、時間の都合で行くことができませんでした。
今年の岐阜基地航空祭の折に行ってみたいと思います。「飛鳥」も実物を見てみたいしね。

今月号のこく空ファンによると鹿屋基地に運ばれた二式大型飛行艇ですが、一般公開は5月中旬になるとのことです。エアメモが4月29日ですから、そのときに見学することはできないようです。

中小企業の再生支援マニュアル

 この書籍は、中小企業診断士の実務補習終了時、中小企業診断協会に入会したのを記念していただいたものです。(同友館が発行しています。)
 中小企業の再生のプロセスごとに、中小企業診断士の果たす役割について書いてあります。
 ・・・これ、実務補習が始まる前にほしかったな。
1.経営が困難になった要因の克服
2.経営改善計画案の策定
3.再生方法の選択
4.会社整理における診断士の役割
 の4章に分かれています。
 この中で診断士が活躍できるのは、主に1~3の段階ですね。4の段階に至っては、弁護士の仕事となります。逆に4の段階では非弁行為の話が載っていました。弁護士でないものが訴訟を取り扱うことを禁止しているものです。これは注意せねばなりませんね。4の段階では、弁護士(他に、公認会計士や税理士など)との連携は必須でしょう。
 今回、実務補習していて分かった(というか、改めて思い知らされた)のは、企業が経営困難になる理由は、直接的には金融機関からの短期借り入れの書き換え拒否など資金繰りの逼迫です。ですが、やはりそこに至るまでにはそこに至るまでの理由というものがあるんですね。つまり、本業の市場が成熟から衰退に向かっているとか、無理な設備投資をしていたとか、過剰な在庫を抱えているとかです。それをほっといていては、いくら財務の改善をしても、ただの対症療法でしかありません。
 短期的には、自前で資金を調達しなければならない場合もあるでしょう。ですが、中長期的には、銀行との協力関係の維持は欠かせません。銀行の協力を得るには、経営改善に向けて具体的な計画を策定し、それを着実に実行していくことです。
 それから、金融機関は今は金融庁からのお達しで、企業の格付けをきちんとしなければなりません。いくら、金融機関側が独自の判断で融資をしようと思っても、格付けに応じた貸し倒れ引当金を充てなければならないのです。ということで、金融機関から見れば、格付けが第一条件となります。格付けが上がれば、貸し倒れ引当金の充当額が少なくてすみますから、その分だけ貸しやすくなると言うわけです。その格付けを改善するためにも、遊休資産の売却などを進め、バランスシートをきれいにすることが大切ですね。
 もちろん、資金繰りが逼迫している企業にとって、緊急の延命措置は必要です。ですが、その後の大手術(本命の改革)を成し遂げなければ、企業の再生は不可能です。そして、大手術後のリハビリを行って、やっと自立した活力のある企業へとなるのですね。
 この書籍は、各段階における企業の診断についていろいろと書いてあります。ほんと、先に読んでおけばね・・・
 それから、この書籍(第3刷だけかな)、p48が2つあるんですね。本来ならばp49が入るところにp48が入っています。そのため、p49がない。
 というわけで、同友館に連絡したら、p49を送ってくれました。感謝、感謝。

日経アドバンテージ 2004年02月号

 雑誌がたまっているので、片っ端から読んでいます。書評を書く順番が時系列になっていないのは勘弁してくださいね。

追跡:3社はこうして決断した
生き残りをかけたIT戦略


 海光社、大西、デュプロの3社を取り上げて、この3社が厳しい状況から抜け出す状況をIT戦略の観点から取材しています。ITコーディネータとの二人三脚によりIT戦略を立案します。また、IT戦略の進捗状況をチェックするためのアドバイザリ委員会の設置も行っています。
 海光社は、「市場縮小によって売上高がピーク時の3分の1に落ち込む」、「営業を卸しに委ねていたため最終顧客が見えていない」、「マーケティング力がなく独自の商品開発力が乏しい」という経営課題を抱えていました。海光社の最終顧客は漁業協同組合、個人の漁師など漁法にこだわりを持つ人や、水産高校、大学の水産学部などの新しい漁業のあり方などを研究する人々などです。これらの最終顧客のニーズを的確に吸い上げるためにホームページを設置しました。
 ホームページの設置は、漁業協同組合などのニーズを吸い上げるのには?という気がしましたが、最近は若手の漁師を中心にインターネットを使う漁業関係者も増えているそうです。また、水産高校などや大学の水産学部の学生などはインターネットを活用するのは当たり前の状況だそうです。
 大西は、「景気低迷で顧客からの注文が急速に減っている」、「営業ノウハウが明確化されておらず顧客を開拓できない」、「社員の情報リテラシーが低く、IT活用のセンスが乏しい」などの経営課題を抱えていました。
 ここも、ホームページを利用して旗幕の歴史や種類、素材、製造方法などを紹介しています。そして、検索エンジンで必ずトップに表示されるようなホームページ作りを行いました。中小企業のホームページという色合いを抑えて、旗幕の総合ポータルサイトのような形とし、そこから大西のホームページに誘導するような仕組みとしました。
 デュプロ東和は、「事業の2つ目の柱が黒字化できず育たない」、「社内システムがばらばらで必要な情報がすぐには出てこない」、「成功ノウハウが他部門へ水平展開できていない」などの課題を抱えていました。
 ここは、ホームページによる顧客獲得という話ではなかったです。顧客情報や取引履歴を統合的に管理するシステムを構築して、攻めの営業を行おうということです。顧客管理を徹底的に行うことで、営業のタイミングを逃さず、機会喪失を最小化しようということです。
 今回の3件の事例は、「仕組みを作りました、でも成果はこれから」という段階で、その後、本当に事業は回復軌道に乗ったのかとか具体的な成果までは記事になっていません。そこが少し物足りないかな。今は、どの中小企業でも「ITを駆使して、商品やサービスの差別化を、顧客満足度の向上を」などと叫ばれていますが、本当にうまくいったの?という感じがします。(私がソフトウェア業界に身をおきながらこんなことを言うのは変でしょうか。)
 IT導入は情報戦略の中の一つの戦術に過ぎないと思うんですよね。ここでいう情報とは、必ずしもコンピュータをベースにしたものではありません。企業に集まってくる情報を広く一般的に意味します。その情報を効率よく処理するために、ITがあると便利ですというくらいのスタンスで行かないと。何がんでもITを導入すればいいというものではないでしょう。
 記事の最後にアドバイザー達の座談会の模様が載っていましたが、やはり同じような考えをお持ちのようでした。企業を見るときに、その企業の弱みは「それこそたくさん」見つかりますが、強みというのはなかなか見つかりません。さらに、その強みの中で、他者の真似できない圧倒的なもの「コアコンピタンス」にいたっては、見つけるのは至難の業です。(でも、雑誌や書籍には、コアコンピタンスの強化が大事だなどと簡単に書いてあります。)そう簡単に見つかれば、誰も苦労はしませんよね。
 でも、やはりどうにか見つけねばならないのでしょう。いろいろな切り口で、自社の事業を分析してみなければなりません。

週刊東洋経済2004年02月14日号

特集
ロングセラー商品の秘訣
こうすれば、長く愛される

 身の回りにあるロングセラー商品の秘密に迫る特集です。こういった特集は読みやすいですね。

 ロングセラー商品には共通した何かがあるということです。それは、「コアベネフィット」です。
「コアベネフィット」とはその商品が消費者に与える中核的な便益・価値のことです。

 ロングセラーになるためには、何よりもこのコアベネフィットを明確にすることが必要です。そしてかつ、それが消費者に指示されなければなりません。さらに、他社の商品とのあいだで繰り広げられる厳しい競争に勝つには、他社の製品とここが違うということを明確に打ち出さなければなりません。この差別化ができなければ、やがては類似品、追随品に取って代わられる運命です。

 さて、その一方で、消費者の嗜好や市場環境は変化していきますので、その変化に対して柔軟に対応しなければなりません。

 今回取り上げているのは、「カップヌードル」、「ポカリスエット」、「スーパーカブ」、「ザ・ビートルズ」、「バーバリー」、「G-SHOCK」、「南天のど飴」、「レゴブロック」などです。

 カップヌードルは、発売以来32年以上を経過しています。その販売累積が200億食を突破しました。カップヌードルの場合、その最大の悩みは、「変化が許されない」ということにあります。味が変わってしまうと、今まで選択し続けてくれたロングユーザーが多いとのこと。しかしまた、それでは新しいユーザーの開拓に手間がかかることになります。そのために、時代に先駆けるということをイメージにした宣伝を行っているそうです。確かにTVのCMを見ると、斬新さが見られますね。食事しているシーンはあまりなくて、CGを使った目を引くものばかりです。

 ポカリスエットは、人間に必要な水分の補給のための飲料として長いあいだ支持されてきました。ポカリスエットのロングセラーの秘密は、地道な販促活動と製薬会社であることの自負に他ありません。小中学校などに赴いては運動中の水分補給の重要性に関する講演を行ったり(それも極力商品の宣伝は抑えて)、飛行機を飛ばして血栓予防効果のあることを実験したりしています。こういった活動はCMなどに比べてすぐに効果が現れるわけではないのでしょうが、この地道さがこそがこの商品の強みだったりするのでしょう。

 スーパーカブといえば、新聞配達などでおなじみです。これも最初のモデルが発表されてから46年を超えているそうです。私なんかが生まれる前から走っていたのですね。現在のスーパーカブはエンジンがOHVからOHCに変わったくらいで基本的なデザインはそのままです。このバイクがなぜ支持されているのかというと、やはり「顧客の視点に立った設計コンセプト」であることでしょう。未舗装路の走破性のために17インチのタイヤを新たに作成したり、燃費や騒音を克服するために4ストロークのエンジンを開発したりしています。

 ザ・ビートルズときて、今までの商品とは少し毛色が違うかなという感じも受けましたが、これも今売れているのですね。ザ・ビートルズというものをひとつのブランドとしてとらえ、それを効果的に露出(宣伝広告などで)して消費者に訴求しているのでした。私もついつい買ってしまおうかなと思っています。

 バーバリーのブランド品は、私もいくつか持っています。自分から選択したわけではなくて、何かのときのプレゼントとかで贈られることが多いです。バーバリーの戦略は、「安売りせず、店舗数も絞り、ステータス維持に努める」ということらしいです。ブランドのイメージを守るということですね。一度傷ついたブランドは立ち直れないという考えが、その根底にあります。

 G-SHOCKは、私は残念ながら持っていません。ちょっと大きいかなと思っていまして・・・。このG-SHOCKはフリーペーパーを利用して、「かっこいい人が」G-SHOCKを身につけていることを若者達に訴えました。このフリーペーパーによる戦略が奏功し、G-SHOCKは若者達のあいだに口コミで広がっていきました。しかし、これはブームであって一時的なものです。次に打ったのは、20代後半をターゲットにしたタフな男が身につけるものというイメージ訴求です。消防士を使ったCMなどにそれが現れています。ソーラー+電波を搭載した製品も好調だそうです。そもそも、カシオの戦略は高級ブランド志向ではなく「実用性」にあります。G-SHOCKはまさにそれだという感じがしますね。

 南天のど飴は私の子供のころからあまり親しみがなく、今回の商品群の中でも「最も知らない」商品です。南天のど飴は最初食品として扱われていたのだそうですが、途中の法改正により「南天実エキスを食品として使ってはいけない」ことになったそうです。また、南天実エキスは医薬品としての使用も認められず、まさに八方ふさがりの状態になりました。結局、発売以来クレームがないことを盾にした3年越しの陳情でやっと特別承認をもらって再発売にこぎつけたということらしいです。なかなか順風満帆にはいかないものですね。

 レゴブロックは、子供のころから親しみました。当時、ダイヤブロックとレゴブロックを持っていて、お互い組み合わせることができないことに不便さを感じていました。私は「ダイヤ派」だったのですが。でも、レゴブロックが商品のブロックを組み合わせて大きな町並みやつり橋を作っているのを見せられて、胸がときめいていました。
 レゴブロックは近頃の子供達のように遊ぶおもちゃがたくさんある世代の子供にはあまり興味を与えなかったのでしょうか。そこで、戦略を全面的に変えて、テレビのアニメ番組の放映時間などに積極的にCMを流すようにしました。また、子供が見る雑誌などにも広告を記載しました。効果はてきめんです。これによって、売上高は激増しました。
 レゴブロックは、一方で、知育玩具としての立場を放棄したわけではありません。これを具現化するために、レゴミュージアムなどのテーマパークを積極的に展開しています。

 これら、ロングセラー商品に共通しているのは、「発売当初から変わらない」という点です。もちろん、その後の技術革新によって、製法などは変わっていますが、商品そのものはほとんど変わっていません。それは、発売当初からその商品の「完成度が高かった」からに他ありません。それは最初に商品を作るときに「消費者のことを考えた」ことによるものでしょう。

 ロングセラーになるためには、発売時にまずある程度売れなければなりません。最初に売れなければ、そこで生産中止となってしまうのですから。「あのときのあの商品、今だったら売れるのにな。」ではだめなのです。そして、その販売数が持続されなければなりません。そのためには、コストダウンなども必要でしょう。市場の変化に合わせた改良も必要になるかもしれません。でも、それはあくまで「その商品のコンセプトを維持しながら」の改良でなくてはならないのです。そうでなければ、時代に流されて、他の類似商品の後塵を拝すことになってしまいます。

 ビジネスの世界でも、このロングセラー商品から学ぶことは多いですね。

週刊東洋経済 2004年01月31日号

 週刊東洋経済 2004年01月31日号の特集は、中国です。

特集

鉄、金、原油、小麦・・・

中国”爆食”

 我々が中国を見るときに、「安い労働コストを生かした世界の工場」であるとか、「日本の産業の空洞化の直接的な要因」であるとか、モノ(製品、サービス)を供給する側面で見ることが多いと思われますが、今回はその逆、需要面から中国を見た切り口です。つまり、10億超の人口を抱える中国は巨大な供給地であるとともに消費地であるということです。世界の工場として経済成長を遂げる中国は、そこで暮らす国民の所得を向上させ、消費を促進させます。結果、巨大な可処分所得を持つ富裕層を中心として、一大消費ブームが到来するということです。
 話は、金の相場の値上がりから始まります。さらに、原油や天然ガス、小麦など17品目を指数化したCRB先物指数は、アジア通貨危機以前の最高値を抜いています。
 これらの国際商品の高騰の原因として5つを挙げ、その中でも中国国内での消費が最も影響を及ぼしていると述べられています。
 次に、国際商品を個別に取り上げて、それぞれの現状や見通しなどが述べられています。
1.鉄鋼
 国内では、製鉄会社の統合が進み、購入者側との価格交渉力が強化されました。それに、今回の中国の需要増大による追い風があり、製鉄会社側に有利な状況が続いています。また、ステンレススチールは鉄とニッケルの合金ですが、ニッケルの価格が昨年夏場から上昇中です。これは、日本や欧州中国でステンレスの需要が堅調なのに加えて、半導体生産の回復でリードフレーム用の需要が急増したことに原因があります。また、ニッケル自体の取引市場が小さく、ヘッジファンドが流入して値ざや取りの標的にされているとの指摘もあります。ステンレスの消費先である建設業界は不況が続き、価格転嫁もままならない状況です。
2.化学
 ポリエチレン、ポリプロピレン、塩化ビニールなどそれぞれ好況に推移しているそうです。特に塩ビでは、中国から米国向けの玩具などが好調であり、中国国内の需要も増大、更に、米国経済の好調により欧米からアジアへ流入する塩ビ樹脂が減少するなどの影響で需給の逼迫感が強いと述べられています。日本国内の塩ビメーカーは長年の赤字体質の脱却に期待しています。
3.石油
 石油は、原油価格が高水準で推移する中、国内におけるガソリンなどの市場価格は需要の頭打ちやSSの競争激化により引き上げが難しい状況です。原油価格が高騰する原因は、需要面で欧米の寒波や米国の堅調な経済状況そして中国の台頭が挙げられる一方、供給面でイラクの戦後復興の遅れやロシアのインフラ整備の遅れがあります。
3.繊維
 化学繊維の原材料となるエチレングリコールは、中国での需要増が毎年50万トン規模に達しています。そのため、生産が追いつかない状況が続いています。東レでは、原材料価格高騰を迅速に価格に転嫁できるように、市況予測や購買情報の共有化を進めていっているそうです。
4.食品
 穀物の市場も騰勢が続いています。食用油の原料となる大豆は米国での需要の逼迫を受けて近年にない高騰を示しています。その逼迫を加速させているのが、中国における「食生活の欧米化」だそうです。日本国内ではデフレ状況が続き、原材料価格の高騰を販売価格に転嫁しにくいのが実情です。国内では食用油メーカーの統合が行われましたが、統合効果を吹き飛ばしてしまいそうな雰囲気です。
5.金
 昔は、「有事のドル」と呼ばれていました。しかし、同時多発テロの発生や、それに続く米国のユニテラリズムの台頭、アフガニスタンやイラクとの戦争などにより、「ドルが頼れる通貨である」という神話は崩壊しました。しかし、ドルに変わる国際通貨は存在しません。そこで、人類が共通して価値を持つと認識する「金」の保有が促されました。そこに、中国の金口座売買開始が始まりました。中国国民は「金の選好度」が高いとされています。その結果、金の騰勢が続くのでした。
 国際商品価格高騰の背景として5つの要因が挙げられていますが、その中でもっとも大きな要因は「中国の経済発展」であると述べられています。
 中国の経済発展はここしばらく続くと見られていますが、懸念材料もいくつかあります。中国には3つのバブルの兆しが出ているそうです。それは、投資、銀行貸し出し、そしてマネーサプライです。また、不良債権問題も深刻だそうです。数値はいずれも日本の銀行の3~4倍を示しており、事態の深刻さを表しています。
 さて、中国の旺盛な需要に支えられた国際商品価格の高騰が、日本のデフレ脱却の起爆剤になるかというのが、記事の最後にあります。
 しかし、そうはならない・・・点も3つほど挙げられています。
1.原材料の高騰をそのまま商品の価格に転嫁しにくい状況であること。日本の企業は内部の努力で原材料費の高騰を吸収する行動を取るのではという見方です。
2.過去、国際商品の価格高騰が最終財の価格引き上げにつながったことはないということも挙げられています。
3.円高により、国際商品の価格高騰分が相殺されているという実情もあります。
 最後に、05年度の予測です。それは、やはりアメリカの景気の状況に左右されると結論づけられています。アメリカの製造業景況循環の期間が約20ヶ月であり、05年初めには下降局面にはいるという可能性があります。問題はその景気後退の程度です。中国向けの製品輸出増を食いつぶしてしまうほどの景気の落ち込みがあると、デフレの脱却は難しいだろうとされています。逆に、中国への輸出が堅調に推移してアメリカの減速分を補えれば、日本はデフレのスパイラルから抜け出すことができるでしょう。
 今回の特集は、非常に興味深かったです。日本の産業界では中国脅威論などがささやかれていますが、中国の経済的な発展が国内の輸出増などプラスの方向に働くこともあるというのは、新しい見方だと思いました。そういえば、福岡の家電量販店には外国人の客が多いという話をしたばかりでしたね。

日経システム構築 2004年02月号

特集

どうする既存資産

知らぬ間に忍び寄る”不良化”の危機

 いったん構築されたシステムを維持していく上での課題です。システムは構築された瞬間から陳腐化が始まります。構築時には想定されていなかった業務の変化や、環境の変化により、このシステムを維持していくべきか、それとも新しいシステムに切り替えるべきかの選択に迫られます。
 資産が陳腐化していく要因はいくつか挙げられます。(これは診断士ネタですね。)
 この記事では、まずWindows系のOSのサポート期限切れ、同様にSAPやノーツなどのサポート期限切れ、などが課題として挙げられています。いつもニュースになるWindows系のOSのサポート切れですが、個人ユーザーならともかく企業ユーザーの場合は新しいOSに交換するコストは馬鹿になりません。もう少し、期間延長を考えてほしいものです。それに、OSを新しいのに交換すると一部の機能に互換性がない場合もあり、そのために、関連ソフトも最新版に更新しなければならない状況も発生します。
 ハードウェアはソフトウェアよりも多少息が長いとはいえ、年を重ねるごとに保守部品の調達に支障が出てきます。個人レベルで慣れている人ならば、新しいパソコンに乗り換えるのはそれほど手間はかかりませんが、業務システムのハードウェア移行は大変になります。
 情報システムが不良化するその他の要因として挙げられているのが、人の問題です。例えば、COBOL言語を扱える技術者の不足は、現在大規模なシステムをCOBOLで動かしている企業にとっては大問題になるでしょう。また、情報システムの仕様書が残っていないか、残っていてもアップデートされていないことが多いです。このため、開発時に担当していた技術者が退職したあと、そのシステムを扱える技術者がいなくなってしまい、維持管理ができなくなってしまうこともありえます。この場合は、新しいシステムを構築しようとしても既存のシステムの処理内容が全く理解できないということにもなり、その技術やノウハウは使い捨て状態になってしまいます。技術者が限定されるのは、独自の仕様により構築されたシステムが多いことにも原因があります。
 ところで、この記事は、問題点を事実としてあげただけで、解決策が示されないまま終わっています。(;_;)/~~~
 それでは、あんまりだ!!というわけで、私なりの解決策を示してみましょう。
 Windows系のOSのサポート切れは、どうしようもないです。(^^) したがって、OS導入時にいつまでサポートされるのかを考慮する必要があります。また、サポート切れになったからといって使用できないわけではないし、インターネットに接続されて致命的な脆弱性があるというようなことでなければ、使い続けることは可能でしょう。
 乗り換えるメリットは、
・新しい機能が使える。
・最新のサポートが受けられる。
 乗り換えるデメリットは、
・移行に伴うコストがかかる。
・ソフトの非互換性がある。
 サポート切れ時に新OSに乗り換えるのであれば、それを見越した設計、実装、及び運用スケジュールを事前に考えておく必要があります。ソフトを組むときに、「最新の、デファクトになるかどうか分からない技術」や、「枯れた技術」を使うのは控えて、「ほどほどに浸透して次期OSでも採用されるはずの技術」を利用するべきです。
 ミドルウェアも同様です。あえて最新の機能を使う必要がなければ、旧バージョンを使い続けることも可能です。
 これらのメリットデメリットを考えて移行するかどうかの判断をすることになります。
 ハードウェアは導入時に耐用時間を考えて保守部品を確保しておくべきです。また、特殊なハードウェアの導入は避け、一般に入手しやすい物を選ぶべきです。ソフトウェアの移行がしやすいハードウェアであることも重要です。
 人の問題は、・・・きっとどこのシステムでも同じなのでしょうね。ドキュメントをアップデートして実際のシステムとの整合性を図っていくことと、標準的な技術を使用することによって、人に依存したシステムにならないようにすべきですね。・・・といっても、私の働いているところなどは、「人に依存したシステム」を地で言ってます。(^^)
 情報システムって、作るときのことばかりを考えて、その後使い続けていかなければならないことをあまり考慮していません。TCO(Total Cost of Ownership)を見据えた情報システムの構築が必要となるでしょう。それが、情報システムのコストを最小化することになります。

日経情報ストラテジー 2004年03月号

さて、今日は日経情報ストラテジー 2004年03月号の書評です。

特集1
トヨタ流企業改革のツボ

トヨタ流といえば、「カンバン」方式と呼ばれるJITが有名です。それと同時にトヨタ流改革として「カイゼン」が挙げられますね。特集1ではトヨタ流の企業改革を行って収益性の高い企業に生まれ変わった企業を紹介しています。
・・・記事には、「ここがトヨタ流」という枠囲いで各社の改革のポイントが数個ずつ挙げられています。これは、私がまだ中小企業診断士試験の受験生だったら、必ずメモしておきたい項目ですね。もちろん、これからも大事になるでしょう。(「ここがトヨタ流」はあえて本稿には引用しないことにします。)(^^)
1.経営危機脱した伊藤ハム
今はアメリカのBSEが問題になっていますが、2001年の後半は国内のBSEで大問題になっていました。それと、BSEに続いて発生した業界の不祥事で伊藤ハムは創業以来の危機的状況でした。そこに、取引のあった紀文やすかいらーくからNPS(新生産方式)の導入を広めているコンサルティング会社を紹介されます。伊藤ハムはNPSを自社流にアレンジしたIHPS(伊藤ハム生産方式)を導入し劇的な収益改善を成し遂げました。グラフを見るとまさにV字回復ですね。
具体的には、工場内の無駄を徹底的に省くことです。うずたかく積まれた仕掛品、無駄な作業員などを削減します。NPSとは何か特別なことではなく、誰もが当たり前だということだそうです。まさに、「コロンブスの卵」です。でも、ではなぜやらないのか。できないのか。それは、トップが陣頭で指揮を取らないからです。記事にも経営トップがやる気にならなければNPSは失敗するとあります。
2.ロックフィード トヨタ自動車から改革者を招へい
首都圏の百貨店で惣菜コーナー(惣菜店)RF1を展開するロックフィードのお話です。こちらはいわばフレキシブルマニュファクチュアリングシステム(FMS)にも似たやり方が紹介されています。日本語ではフレキシブルな生産システム(フレキシブルは日本語訳されないのかな?)というそうです。多品種少量生産を行う場合に工程をすばやく切り替えて柔軟に対応するシステムのことです。ここでは、そのFMS的なやり方と、セル生産方式とを組み合わせた手法をとっています。可動式のテーブル(一人用のパイプ机)を生産する品種ごとに並び替えて、柔軟に対応しています。工場内に固定式のテーブルなどないそうです。どういうレイアウトにするかは壁に張り出されていて、そのレイアウト図に基づいて瞬時にテーブルの並びを変えるそうです。
3.あいおい損害保険 営業にもトヨタ生産方式が生かせる
トヨタ生産方式といえば製造業向きの手法が多いと思われがちですが、ここでは金融業である相生損害保険の営業部門へのトヨタ流の応用事例が報告されています。ここでは、他社の損保に加入している顧客をいかにして自社に引き込むかが課題であり、そのためには他社情報の収集が必要であるとあります。
4.トヨタとリクルートの力が生きる
河村電気産業、スズデン、中京銀行を取り上げて、OJTSが提供する人材育成サービスを利用した人材育成に着いての報告です。一時的な改善は対症療法でしかありません。企業が永続する(ゴーイングコンサーン)ためには絶え間ない改革が必要です。そのため、現場で改革のリーダーとなるべき人材の育成が必要であるという観点から、OJTSの人材育成サービスが紹介されています。
まとめとしては、工場やオフィスの最適化とは、結局人やモノの流れを最小化することに尽きると思います。一連の作業の中で人やモノが移動する距離・時間はムダ以外のなにものでもありません。仕掛品や伝票、そして作業者の移動を最小化するようなもののレイアウトと人の配置が必要です。

特集2
密着取材!
GEのリーダー養成術

第2特集はGEのリーダー養成術に関する記事です。私は以前、TV番組でジャック・ウェルチのリーダー養成に関する特集を見たことがあります。GEは人材育成に金をかけているなという印象でした。未来への投資、米百俵ということでしょうか。TV番組でも紹介されていたクロトンビル(ジョン・F・ウェルチ・リーダーシップ・センター)の写真も紹介されていました。ここでは、ウェルチじきじきに講義を行うこともあったとか。
記事は、昨年11月に六本木ヒルズで行われたGEのBMC(ビジネス・マネジメント・コース)という研修についての取材です。実際の企業の経営課題について解決策を検討するという行動学習(アクションラーニング)です。
BMCでは研修の結果をそのままCEOなどの最高幹部に報告し、彼らはその場でその提案の採用、不採用を決定するそうです。つまり、研修の結果がそのまま企業戦略となってしまいます。記事を読むとBMCとは大変実践的な研修であるということが理解できます。
GEには、上級リーダー向けのBMC研修とは別に、CLPという営業分野のリーダーシップ養成プログラムもあるそうです。ここでは、ジョブ・ローテーションを通しての人材育成が行われています。通常は、ジョブ・ローテーションは2年から3年くらいずつ行うものですが、GEでは半年ごとに行うそうです。そして、その半年間に明確な結果を出さねばならないという、受講者には厳しいハードルが課せられます。
GEでは、こうした研修と選抜のピラミッド構造により、次世代のリーダーを継続的に養成し、それを競争力の源泉としているのですね。こうしてみると、日本企業の人材育成はまだまだ遅れているとしか言いようがないです。もっと、体系的な人材育成を図るべきでは。おっ。
今号の特集は2つともおもしろかったしためになりました。でも、記事としては、日経情報ストラテジー的な話題ではないような気が・・・経済誌向けの記事ですね。日経BP社も似たような雑誌をたくさん出して互いに領域を侵害し合っているんじゃなかろうかと思います。

週刊東洋経済 2004年01月24日号

 さて、書評を再開します。手元には、身動きできない私をあざ笑うかのように数冊の雑誌が届いているのでした。1日1冊読破します。

復活せよ!

国内旅行

 先日、経済学の本を読んでいたら、上級財、下級財の話が出てきて、「海外旅行は上級財、国内旅行は下級財」という例が挙げられていました。上級財下級財というのは財(サービスも含む)の分類で、例えば、海外旅行と国内旅行の2財しか存在しない世界で、消費者の所得が上昇したときにその2財の消費量がどう変わるかによって分類されるものです。上級財は所得が上昇すれば消費が増えますが、下級財は所得が増えれば消費が減少します。古典的な経済学の教科書にはバターとマーガリンの例が載っていることで有名です。(^_^;)
 と、脱線はこのくらいにして、実は国内旅行をする人の数は年間3億人超です。国民一人当たり年間3回は国内旅行をしていることになります。それに対して、海外旅行は1300万人と10人に一人しかしていないのです。ビジネスの出張や帰省を含んでいるとはいえ、桁違いの数字です。
 なのに、国内旅行は地味なイメージがあります。それは、旅行者一人旅行一回当たりの単価が約3万円と、海外旅行の約10分の一であり、企画から手配までの手間がかかる割にあまり儲からないということにその主因があります。つまり、国内旅行は成熟産業だと言うことです。
 この辺で、もうぴーんと来たでしょう。成熟産業というのは、あくまで顧客のニーズが変化しないことを前提に成り立つものです。しかし、国内旅行を行う旅行者のニーズは、そして市場そのものは刻々と変化しているのです。そうなると、新しいビジネスチャンスが生まれてくるというものです。今回はそんな特集です。
 旅行の内容の変化について2つの視点から取り上げています。
 一つ目は、旅行者(団体、グループ)の規模です。旧来の客というのは大型バスで乗り付けてくる団体客であり、新しい客というのは個人や少人数グループの客です。今や団体旅行はすたれ、個人(グループ)で旅行する時代です。この新しい風をうまくつかんだ宿泊施設は繁盛を続け、団体客にすがり続けたところは四苦八苦しています。
 二つ目は、旅行の目的です。観光バスで、地方を回りつつ、つまみ食い的に観光を行うような旅行は今は衰退し、目的性の高い旅行がはやっています。特集では例としてJTBの「ファーブル」などを紹介しています。ファーブルは自然と接するエコツーリズムを取り入れた商品です。
 次に、旅行者を迎える地域の集客改革として、長野県の「小布施町」の成功体験の紹介と、今春九州新幹線が開業する南九州地方の取り組みを紹介しています。いずれも、新幹線の開業というハードウェアと客を集めるソフトウェアの調和が必要だと述べられています。
 特に小布施町の北斎館周辺整備事業の話はおもしろいです。「群居の思想」だとか。働く人と住む人と訪れる人が調和できるってどんな感じでしょうか。行ってみたくなります。
 九州新幹線は部分開業ですが、鹿児島を随分近くします。今まで、福岡-鹿児島間が3時間50分かかっていたのが、2時間10分になるのですから。私も鹿児島に行くときは是非利用しようと思っているくらいです。さて、部分開業ながら、ハードウェアができました。それに対してソフトウェアはどうかな。あの有名な佐賀県知事さんのインタビューが載っていたけど、佐賀県だけ、或いは各県がバラバラに行動してはその効果を最大化できません。九州人の一人としては、是非とも九州全体の観光底上げに知恵を絞ってもらいたいものです。
 旅行者そのもののお話しもあります。国内旅行で20万円超の出費をする50代以上の世代(団塊の世代)をターゲットにしようというお話しです。彼らが仕事をリタイアした後、その余った時間と金を国内旅行に向けさせようと言うことです。彼らをターゲットにした企画も次々と登場しているようです。古くはフルムーンなんてのがありましたね。(今でもあるのかな。)旧国鉄は時代を先取りしていた?
 さて、この高齢者(エルダー)をターゲットにという記事の中で日本の人口ピラミッド図が載っていました。・・・もうピラミッド型ではないですね。釣り鐘型でもない、二重に山のある紡錘形とでも言うべきか。しかし、私の年の人口だけ、ひときわくぼんでいるんです。(ひのえうまです。)一目で分かります。(^_^;)
 ネット販売部門では、旅の窓口の攻勢が伝えられています。ネット販売だけを取れば、あのJTBさえ足元にも及びません。旅の窓口には私もたびたびお世話になっています。m(__)m
 ところで、旅の窓口と言えば、楽天による買収がありましたが、その買収によってシナジーは発揮できるのでしょうか。楽天を利用する客を旅窓に誘導できるのか・・・。どうなるか楽しみです。さて、旅窓以外のネット販売ですが、あれこれと工夫を凝らしています。各社の工夫もなかなかおもしろいです。
 最後は、外国人旅行者です。国が観光立国を目指して動き出しました。私は福岡の人間ですから、福岡の家電量販店にはちょくちょく行きます。そこには、なんと中国人、台湾人、韓国人など多くの外国人の姿が見られます。記事に書いてあることが現実に見られるのです。確かに、福岡はアジアの窓口だなと実感します。たまに東京に行ったとき、お上りさんよろしくアキバを徘徊しますが、福岡ほどは外国人を見かけません。(あそこは日本人だけでも相当多いしね。)外国人は昔は天神地区が多かったけど、近頃特に博多駅周辺が多いようです。なんといっても、空港から5分で博多駅ですから、利便性は抜群です。
 脱線しかけましたが、海外からの旅行客を招き入れて国を潤しましょうというお話しです。外国人旅行者は、現在は韓国がトップですが、中国の潜在力は見逃せません。しかしながら、外国人観光客受入にはビザの問題があるそうです。このビザの発給は国内でも簡素化するように声が挙がる一方で、外国人犯罪の増加など治安の悪化を理由になかなか簡素化されないのが実情のようです。
 というわけで、今回は国内旅行に関する特集でした。人々の生活スタイルが多様化して旅行に対するニーズも様変わりしてきました。どこの業界もそうでしょうが、そうしたニーズの変化をとらえて手を打てるところは繁栄し、そうでないところは廃れていってしまうのでしょう。他山の石としなければなりませんね。