日経システム構築 2004年02月号

特集

どうする既存資産

知らぬ間に忍び寄る”不良化”の危機

 いったん構築されたシステムを維持していく上での課題です。システムは構築された瞬間から陳腐化が始まります。構築時には想定されていなかった業務の変化や、環境の変化により、このシステムを維持していくべきか、それとも新しいシステムに切り替えるべきかの選択に迫られます。
 資産が陳腐化していく要因はいくつか挙げられます。(これは診断士ネタですね。)
 この記事では、まずWindows系のOSのサポート期限切れ、同様にSAPやノーツなどのサポート期限切れ、などが課題として挙げられています。いつもニュースになるWindows系のOSのサポート切れですが、個人ユーザーならともかく企業ユーザーの場合は新しいOSに交換するコストは馬鹿になりません。もう少し、期間延長を考えてほしいものです。それに、OSを新しいのに交換すると一部の機能に互換性がない場合もあり、そのために、関連ソフトも最新版に更新しなければならない状況も発生します。
 ハードウェアはソフトウェアよりも多少息が長いとはいえ、年を重ねるごとに保守部品の調達に支障が出てきます。個人レベルで慣れている人ならば、新しいパソコンに乗り換えるのはそれほど手間はかかりませんが、業務システムのハードウェア移行は大変になります。
 情報システムが不良化するその他の要因として挙げられているのが、人の問題です。例えば、COBOL言語を扱える技術者の不足は、現在大規模なシステムをCOBOLで動かしている企業にとっては大問題になるでしょう。また、情報システムの仕様書が残っていないか、残っていてもアップデートされていないことが多いです。このため、開発時に担当していた技術者が退職したあと、そのシステムを扱える技術者がいなくなってしまい、維持管理ができなくなってしまうこともありえます。この場合は、新しいシステムを構築しようとしても既存のシステムの処理内容が全く理解できないということにもなり、その技術やノウハウは使い捨て状態になってしまいます。技術者が限定されるのは、独自の仕様により構築されたシステムが多いことにも原因があります。
 ところで、この記事は、問題点を事実としてあげただけで、解決策が示されないまま終わっています。(;_;)/~~~
 それでは、あんまりだ!!というわけで、私なりの解決策を示してみましょう。
 Windows系のOSのサポート切れは、どうしようもないです。(^^) したがって、OS導入時にいつまでサポートされるのかを考慮する必要があります。また、サポート切れになったからといって使用できないわけではないし、インターネットに接続されて致命的な脆弱性があるというようなことでなければ、使い続けることは可能でしょう。
 乗り換えるメリットは、
・新しい機能が使える。
・最新のサポートが受けられる。
 乗り換えるデメリットは、
・移行に伴うコストがかかる。
・ソフトの非互換性がある。
 サポート切れ時に新OSに乗り換えるのであれば、それを見越した設計、実装、及び運用スケジュールを事前に考えておく必要があります。ソフトを組むときに、「最新の、デファクトになるかどうか分からない技術」や、「枯れた技術」を使うのは控えて、「ほどほどに浸透して次期OSでも採用されるはずの技術」を利用するべきです。
 ミドルウェアも同様です。あえて最新の機能を使う必要がなければ、旧バージョンを使い続けることも可能です。
 これらのメリットデメリットを考えて移行するかどうかの判断をすることになります。
 ハードウェアは導入時に耐用時間を考えて保守部品を確保しておくべきです。また、特殊なハードウェアの導入は避け、一般に入手しやすい物を選ぶべきです。ソフトウェアの移行がしやすいハードウェアであることも重要です。
 人の問題は、・・・きっとどこのシステムでも同じなのでしょうね。ドキュメントをアップデートして実際のシステムとの整合性を図っていくことと、標準的な技術を使用することによって、人に依存したシステムにならないようにすべきですね。・・・といっても、私の働いているところなどは、「人に依存したシステム」を地で言ってます。(^^)
 情報システムって、作るときのことばかりを考えて、その後使い続けていかなければならないことをあまり考慮していません。TCO(Total Cost of Ownership)を見据えた情報システムの構築が必要となるでしょう。それが、情報システムのコストを最小化することになります。