日経情報ストラテジー 2004年03月号

さて、今日は日経情報ストラテジー 2004年03月号の書評です。

特集1
トヨタ流企業改革のツボ

トヨタ流といえば、「カンバン」方式と呼ばれるJITが有名です。それと同時にトヨタ流改革として「カイゼン」が挙げられますね。特集1ではトヨタ流の企業改革を行って収益性の高い企業に生まれ変わった企業を紹介しています。
・・・記事には、「ここがトヨタ流」という枠囲いで各社の改革のポイントが数個ずつ挙げられています。これは、私がまだ中小企業診断士試験の受験生だったら、必ずメモしておきたい項目ですね。もちろん、これからも大事になるでしょう。(「ここがトヨタ流」はあえて本稿には引用しないことにします。)(^^)
1.経営危機脱した伊藤ハム
今はアメリカのBSEが問題になっていますが、2001年の後半は国内のBSEで大問題になっていました。それと、BSEに続いて発生した業界の不祥事で伊藤ハムは創業以来の危機的状況でした。そこに、取引のあった紀文やすかいらーくからNPS(新生産方式)の導入を広めているコンサルティング会社を紹介されます。伊藤ハムはNPSを自社流にアレンジしたIHPS(伊藤ハム生産方式)を導入し劇的な収益改善を成し遂げました。グラフを見るとまさにV字回復ですね。
具体的には、工場内の無駄を徹底的に省くことです。うずたかく積まれた仕掛品、無駄な作業員などを削減します。NPSとは何か特別なことではなく、誰もが当たり前だということだそうです。まさに、「コロンブスの卵」です。でも、ではなぜやらないのか。できないのか。それは、トップが陣頭で指揮を取らないからです。記事にも経営トップがやる気にならなければNPSは失敗するとあります。
2.ロックフィード トヨタ自動車から改革者を招へい
首都圏の百貨店で惣菜コーナー(惣菜店)RF1を展開するロックフィードのお話です。こちらはいわばフレキシブルマニュファクチュアリングシステム(FMS)にも似たやり方が紹介されています。日本語ではフレキシブルな生産システム(フレキシブルは日本語訳されないのかな?)というそうです。多品種少量生産を行う場合に工程をすばやく切り替えて柔軟に対応するシステムのことです。ここでは、そのFMS的なやり方と、セル生産方式とを組み合わせた手法をとっています。可動式のテーブル(一人用のパイプ机)を生産する品種ごとに並び替えて、柔軟に対応しています。工場内に固定式のテーブルなどないそうです。どういうレイアウトにするかは壁に張り出されていて、そのレイアウト図に基づいて瞬時にテーブルの並びを変えるそうです。
3.あいおい損害保険 営業にもトヨタ生産方式が生かせる
トヨタ生産方式といえば製造業向きの手法が多いと思われがちですが、ここでは金融業である相生損害保険の営業部門へのトヨタ流の応用事例が報告されています。ここでは、他社の損保に加入している顧客をいかにして自社に引き込むかが課題であり、そのためには他社情報の収集が必要であるとあります。
4.トヨタとリクルートの力が生きる
河村電気産業、スズデン、中京銀行を取り上げて、OJTSが提供する人材育成サービスを利用した人材育成に着いての報告です。一時的な改善は対症療法でしかありません。企業が永続する(ゴーイングコンサーン)ためには絶え間ない改革が必要です。そのため、現場で改革のリーダーとなるべき人材の育成が必要であるという観点から、OJTSの人材育成サービスが紹介されています。
まとめとしては、工場やオフィスの最適化とは、結局人やモノの流れを最小化することに尽きると思います。一連の作業の中で人やモノが移動する距離・時間はムダ以外のなにものでもありません。仕掛品や伝票、そして作業者の移動を最小化するようなもののレイアウトと人の配置が必要です。

特集2
密着取材!
GEのリーダー養成術

第2特集はGEのリーダー養成術に関する記事です。私は以前、TV番組でジャック・ウェルチのリーダー養成に関する特集を見たことがあります。GEは人材育成に金をかけているなという印象でした。未来への投資、米百俵ということでしょうか。TV番組でも紹介されていたクロトンビル(ジョン・F・ウェルチ・リーダーシップ・センター)の写真も紹介されていました。ここでは、ウェルチじきじきに講義を行うこともあったとか。
記事は、昨年11月に六本木ヒルズで行われたGEのBMC(ビジネス・マネジメント・コース)という研修についての取材です。実際の企業の経営課題について解決策を検討するという行動学習(アクションラーニング)です。
BMCでは研修の結果をそのままCEOなどの最高幹部に報告し、彼らはその場でその提案の採用、不採用を決定するそうです。つまり、研修の結果がそのまま企業戦略となってしまいます。記事を読むとBMCとは大変実践的な研修であるということが理解できます。
GEには、上級リーダー向けのBMC研修とは別に、CLPという営業分野のリーダーシップ養成プログラムもあるそうです。ここでは、ジョブ・ローテーションを通しての人材育成が行われています。通常は、ジョブ・ローテーションは2年から3年くらいずつ行うものですが、GEでは半年ごとに行うそうです。そして、その半年間に明確な結果を出さねばならないという、受講者には厳しいハードルが課せられます。
GEでは、こうした研修と選抜のピラミッド構造により、次世代のリーダーを継続的に養成し、それを競争力の源泉としているのですね。こうしてみると、日本企業の人材育成はまだまだ遅れているとしか言いようがないです。もっと、体系的な人材育成を図るべきでは。おっ。
今号の特集は2つともおもしろかったしためになりました。でも、記事としては、日経情報ストラテジー的な話題ではないような気が・・・経済誌向けの記事ですね。日経BP社も似たような雑誌をたくさん出して互いに領域を侵害し合っているんじゃなかろうかと思います。

週刊東洋経済 2004年01月24日号

 さて、書評を再開します。手元には、身動きできない私をあざ笑うかのように数冊の雑誌が届いているのでした。1日1冊読破します。

復活せよ!

国内旅行

 先日、経済学の本を読んでいたら、上級財、下級財の話が出てきて、「海外旅行は上級財、国内旅行は下級財」という例が挙げられていました。上級財下級財というのは財(サービスも含む)の分類で、例えば、海外旅行と国内旅行の2財しか存在しない世界で、消費者の所得が上昇したときにその2財の消費量がどう変わるかによって分類されるものです。上級財は所得が上昇すれば消費が増えますが、下級財は所得が増えれば消費が減少します。古典的な経済学の教科書にはバターとマーガリンの例が載っていることで有名です。(^_^;)
 と、脱線はこのくらいにして、実は国内旅行をする人の数は年間3億人超です。国民一人当たり年間3回は国内旅行をしていることになります。それに対して、海外旅行は1300万人と10人に一人しかしていないのです。ビジネスの出張や帰省を含んでいるとはいえ、桁違いの数字です。
 なのに、国内旅行は地味なイメージがあります。それは、旅行者一人旅行一回当たりの単価が約3万円と、海外旅行の約10分の一であり、企画から手配までの手間がかかる割にあまり儲からないということにその主因があります。つまり、国内旅行は成熟産業だと言うことです。
 この辺で、もうぴーんと来たでしょう。成熟産業というのは、あくまで顧客のニーズが変化しないことを前提に成り立つものです。しかし、国内旅行を行う旅行者のニーズは、そして市場そのものは刻々と変化しているのです。そうなると、新しいビジネスチャンスが生まれてくるというものです。今回はそんな特集です。
 旅行の内容の変化について2つの視点から取り上げています。
 一つ目は、旅行者(団体、グループ)の規模です。旧来の客というのは大型バスで乗り付けてくる団体客であり、新しい客というのは個人や少人数グループの客です。今や団体旅行はすたれ、個人(グループ)で旅行する時代です。この新しい風をうまくつかんだ宿泊施設は繁盛を続け、団体客にすがり続けたところは四苦八苦しています。
 二つ目は、旅行の目的です。観光バスで、地方を回りつつ、つまみ食い的に観光を行うような旅行は今は衰退し、目的性の高い旅行がはやっています。特集では例としてJTBの「ファーブル」などを紹介しています。ファーブルは自然と接するエコツーリズムを取り入れた商品です。
 次に、旅行者を迎える地域の集客改革として、長野県の「小布施町」の成功体験の紹介と、今春九州新幹線が開業する南九州地方の取り組みを紹介しています。いずれも、新幹線の開業というハードウェアと客を集めるソフトウェアの調和が必要だと述べられています。
 特に小布施町の北斎館周辺整備事業の話はおもしろいです。「群居の思想」だとか。働く人と住む人と訪れる人が調和できるってどんな感じでしょうか。行ってみたくなります。
 九州新幹線は部分開業ですが、鹿児島を随分近くします。今まで、福岡-鹿児島間が3時間50分かかっていたのが、2時間10分になるのですから。私も鹿児島に行くときは是非利用しようと思っているくらいです。さて、部分開業ながら、ハードウェアができました。それに対してソフトウェアはどうかな。あの有名な佐賀県知事さんのインタビューが載っていたけど、佐賀県だけ、或いは各県がバラバラに行動してはその効果を最大化できません。九州人の一人としては、是非とも九州全体の観光底上げに知恵を絞ってもらいたいものです。
 旅行者そのもののお話しもあります。国内旅行で20万円超の出費をする50代以上の世代(団塊の世代)をターゲットにしようというお話しです。彼らが仕事をリタイアした後、その余った時間と金を国内旅行に向けさせようと言うことです。彼らをターゲットにした企画も次々と登場しているようです。古くはフルムーンなんてのがありましたね。(今でもあるのかな。)旧国鉄は時代を先取りしていた?
 さて、この高齢者(エルダー)をターゲットにという記事の中で日本の人口ピラミッド図が載っていました。・・・もうピラミッド型ではないですね。釣り鐘型でもない、二重に山のある紡錘形とでも言うべきか。しかし、私の年の人口だけ、ひときわくぼんでいるんです。(ひのえうまです。)一目で分かります。(^_^;)
 ネット販売部門では、旅の窓口の攻勢が伝えられています。ネット販売だけを取れば、あのJTBさえ足元にも及びません。旅の窓口には私もたびたびお世話になっています。m(__)m
 ところで、旅の窓口と言えば、楽天による買収がありましたが、その買収によってシナジーは発揮できるのでしょうか。楽天を利用する客を旅窓に誘導できるのか・・・。どうなるか楽しみです。さて、旅窓以外のネット販売ですが、あれこれと工夫を凝らしています。各社の工夫もなかなかおもしろいです。
 最後は、外国人旅行者です。国が観光立国を目指して動き出しました。私は福岡の人間ですから、福岡の家電量販店にはちょくちょく行きます。そこには、なんと中国人、台湾人、韓国人など多くの外国人の姿が見られます。記事に書いてあることが現実に見られるのです。確かに、福岡はアジアの窓口だなと実感します。たまに東京に行ったとき、お上りさんよろしくアキバを徘徊しますが、福岡ほどは外国人を見かけません。(あそこは日本人だけでも相当多いしね。)外国人は昔は天神地区が多かったけど、近頃特に博多駅周辺が多いようです。なんといっても、空港から5分で博多駅ですから、利便性は抜群です。
 脱線しかけましたが、海外からの旅行客を招き入れて国を潤しましょうというお話しです。外国人旅行者は、現在は韓国がトップですが、中国の潜在力は見逃せません。しかしながら、外国人観光客受入にはビザの問題があるそうです。このビザの発給は国内でも簡素化するように声が挙がる一方で、外国人犯罪の増加など治安の悪化を理由になかなか簡素化されないのが実情のようです。
 というわけで、今回は国内旅行に関する特集でした。人々の生活スタイルが多様化して旅行に対するニーズも様変わりしてきました。どこの業界もそうでしょうが、そうしたニーズの変化をとらえて手を打てるところは繁栄し、そうでないところは廃れていってしまうのでしょう。他山の石としなければなりませんね。