日経アドバンテージ 2004年02月号

 雑誌がたまっているので、片っ端から読んでいます。書評を書く順番が時系列になっていないのは勘弁してくださいね。

追跡:3社はこうして決断した
生き残りをかけたIT戦略


 海光社、大西、デュプロの3社を取り上げて、この3社が厳しい状況から抜け出す状況をIT戦略の観点から取材しています。ITコーディネータとの二人三脚によりIT戦略を立案します。また、IT戦略の進捗状況をチェックするためのアドバイザリ委員会の設置も行っています。
 海光社は、「市場縮小によって売上高がピーク時の3分の1に落ち込む」、「営業を卸しに委ねていたため最終顧客が見えていない」、「マーケティング力がなく独自の商品開発力が乏しい」という経営課題を抱えていました。海光社の最終顧客は漁業協同組合、個人の漁師など漁法にこだわりを持つ人や、水産高校、大学の水産学部などの新しい漁業のあり方などを研究する人々などです。これらの最終顧客のニーズを的確に吸い上げるためにホームページを設置しました。
 ホームページの設置は、漁業協同組合などのニーズを吸い上げるのには?という気がしましたが、最近は若手の漁師を中心にインターネットを使う漁業関係者も増えているそうです。また、水産高校などや大学の水産学部の学生などはインターネットを活用するのは当たり前の状況だそうです。
 大西は、「景気低迷で顧客からの注文が急速に減っている」、「営業ノウハウが明確化されておらず顧客を開拓できない」、「社員の情報リテラシーが低く、IT活用のセンスが乏しい」などの経営課題を抱えていました。
 ここも、ホームページを利用して旗幕の歴史や種類、素材、製造方法などを紹介しています。そして、検索エンジンで必ずトップに表示されるようなホームページ作りを行いました。中小企業のホームページという色合いを抑えて、旗幕の総合ポータルサイトのような形とし、そこから大西のホームページに誘導するような仕組みとしました。
 デュプロ東和は、「事業の2つ目の柱が黒字化できず育たない」、「社内システムがばらばらで必要な情報がすぐには出てこない」、「成功ノウハウが他部門へ水平展開できていない」などの課題を抱えていました。
 ここは、ホームページによる顧客獲得という話ではなかったです。顧客情報や取引履歴を統合的に管理するシステムを構築して、攻めの営業を行おうということです。顧客管理を徹底的に行うことで、営業のタイミングを逃さず、機会喪失を最小化しようということです。
 今回の3件の事例は、「仕組みを作りました、でも成果はこれから」という段階で、その後、本当に事業は回復軌道に乗ったのかとか具体的な成果までは記事になっていません。そこが少し物足りないかな。今は、どの中小企業でも「ITを駆使して、商品やサービスの差別化を、顧客満足度の向上を」などと叫ばれていますが、本当にうまくいったの?という感じがします。(私がソフトウェア業界に身をおきながらこんなことを言うのは変でしょうか。)
 IT導入は情報戦略の中の一つの戦術に過ぎないと思うんですよね。ここでいう情報とは、必ずしもコンピュータをベースにしたものではありません。企業に集まってくる情報を広く一般的に意味します。その情報を効率よく処理するために、ITがあると便利ですというくらいのスタンスで行かないと。何がんでもITを導入すればいいというものではないでしょう。
 記事の最後にアドバイザー達の座談会の模様が載っていましたが、やはり同じような考えをお持ちのようでした。企業を見るときに、その企業の弱みは「それこそたくさん」見つかりますが、強みというのはなかなか見つかりません。さらに、その強みの中で、他者の真似できない圧倒的なもの「コアコンピタンス」にいたっては、見つけるのは至難の業です。(でも、雑誌や書籍には、コアコンピタンスの強化が大事だなどと簡単に書いてあります。)そう簡単に見つかれば、誰も苦労はしませんよね。
 でも、やはりどうにか見つけねばならないのでしょう。いろいろな切り口で、自社の事業を分析してみなければなりません。