日経情報ストラテジー2004年02月号

 今回は「日経情報ストラテジー2004年02月号」の書評です。この雑誌は前の2雑誌よりも幾分早く手元に届いていたのですが(2004年02月号なのにですよ)、年末年始のどたばたで読む順番が最後になってしまいました。

特集1

次世代CIOを育てる

第一部 優れたCIOは偶然の産物か

第二部 深い専門性を備えた経営者を育てる

 現在の企業において「経営戦略」と同じように重要なものが「情報化戦略」です。もはや情報化なくして企業の生き残りはないと言えるかも知れません。これら2つの戦略は互いに独立して存在するわけではなく、お互いに深く関係し合っています。現在では、「経営戦略」を立案してからそれに合わせて「情報化戦略」を練るのではなく、両者を同時に立案する向きがあります。
 この情報化戦略を立案するために中心的な役割を果たすのが、CIO(情報戦略統括役員)です。情報化戦略の重要性が増すにつれ、このCIOの役割も重要になってきています。
 つまり、優れたCIOを擁する企業は、優れた情報化戦略を立案でき、その情報化戦略が企業の競争力を強化し、市場における有意性を築くことができるというわけです。
 第一部「優れたCIOは偶然の産物か」では、CIOの選任のされ方に疑問を呈しています。企業内でCIOを勤めている人はどのような人たちなのでしょうか。
 多くの企業のCIOは、その企業の情報システムの発展してきた経緯によって変わってくるそうです。例えば、情報システムが経理システムを元に発展してきたものであれば、経理部長クラスの人で情報システムに詳しい人がCIOに就任するなどです。つまり、多くの企業ではCIOを体系的に育成するカリキュラムは整っていなくて、たまたまいちばんCIOにふさわしいと思われる人がCIOに就任するとあります。
 第二部「深い専門性を備えた経営者を育てる」では、CIOを養成するために、特に社外の各種養成機関を紹介しています。これらの専門養成機関では、ビジネスモデル、リーダーシップ、企業における情報技術などCIOに必要とされるスキルについて集中的に学習するようになっているようです。学習形式も単なる講義形式ではなく、ケーススタディやロールプレイングなどを盛り込んだ内容になっています。
 CIOに求められるのは、こういった一般的なスキル+その企業の属する業界や市場の乃至その企業そのものの知識ではないかと思われます。

特集2

有力企業417社調査

IT投資で成果出す

変革型CIO

 特集2も、CIO関連です。「変革型CIO」というもの定義して、「変革型CIO」を擁している企業と「従来型CIO」を擁している企業との業績の比較を行っています。
 変革型CIOとは、「社内で変革をおこしやすい立場にある人」で、かつ「ITを活用した抜本的な改革を行うことを使命として明確に与えられている」CIOであると定義づけています。つまり、変革型CIOの目的は単なるコスト削減や業務の効率化ではありません。ITを軸とした新たな業務プロセスの創造がその主任務となります。
 株式を公開している企業やそれに準じる企業417社から得られたアンケート結果を元に、各企業のCIOがこの2つの型のどちらであるかによって、業績にどのような差異が生じているのかを検証しています。売上高対総利益率の改善率では7倍もの差がついたと書いてあります。
 記事では、いくつかの企業とそのCIOを例に挙げて、業績改善までの道のりとその時にCIOが果たした役割について紹介しています。
 私の意見です。
 創造の前には破壊があります。(どこかの大手電機会社か?)人間は新しいことに対して基本的に抵抗するものなので、従来の業務のやり方を辞めて新しい業務プロセスを構築しようとしたときには、想像を絶する抵抗が生じることでしょう。この抵抗に屈してしまっては、「変革型CIO」と呼べません。抵抗(コンフリクト)を封じるには、前述の「立場」や「使命」のような強制力だけでは駄目でしょう。下手に強制すると相手はさらに反発を強めてしまいます。コンフリクトの解消には「プレゼンテーション」、「コミュニケーション」、「コンサルテーション」などを通した相互理解が必要です。
 変革型CIOには、このようなヒューマンスキルも求められるのです。