義を見てせざるは勇なきなり

いすゞ自動車が期間従業員の契約解除を撤回
12月24日12時39分配信 産経新聞

 いすゞ自動車は24日、契約期間中に雇用契約を解除するとしていた約550人の期間従業員について、当初の契約打ち切りの方針を撤回することを明らかにした。契約期間が満了するまで雇用を継続する。

 いすゞは11月に藤沢、栃木工場の期間・派遣社員計約1400人に対し、12月26日付で解雇することを通告した。これに対し、両工場の期間従業員らが解雇予告の効力停止などを求める仮処分を横浜地裁などに申し立てていた。

(Yahoo!ニュースより)

 期間従業員、派遣従業員など非正規雇用に関するニュースが取りざたされている中、ちょっと気になったニュースである。

 ニュースの論調では、非正規雇用労働者を切り捨てる製造業の企業が悪、それに対して地方公共団体や某居酒屋チェーン店など他の産業が救いの手を差し伸べるのが善と言った構図になっている。どうも、ニュース番組ではこうした、善と悪とか、正と邪とか、二極化する傾向が多くて辟易する。ニュース・ショー形式の番組では、このようなステレオ・タイプが顕著に現れている。そして、それが世論となっていくのだから、日本という国は恐ろしい。そういったものには流されないように生きていこうとは思っているが。

 私の考えとしては、非正規雇用労働者は調整弁であるという立場だ。ありとキリギリスの寓話を例に出すまでもなく、日本型雇用制度を嫌って安易に非正規雇用に流れていったものの末路のようにも思えてしょうがないところではある。全てがそうだとは言わないが、労働者派遣法の改正を機に、仕事を手軽に出来るとか、一生会社に縛られなくて済むとか考えて、安易に非正規雇用という選択肢を選んだのではなかろうか。

 その中で、今回のいすゞの判断はちょっと異色だ。最初から非正規雇用労働者の保護を謳っていたわけではない。仮処分の申請をされるなど、労働側ともめた末の方針転換である。一体何を狙ったのであろう。

 方針転換の理由が述べられていないので推測するしかないが、経済状況から見て人員増加が必要になったわけではないだろう。とすれば、世論に負けたのか、純粋に非正規雇用労働者の生活の確保と言うことになる。世論に負けたというのであればお笑いであるし、もし雇用の確保を狙ったのであれば、不要な人員を抱えていくことはコストの増加を招くだけだと言いたい。判断としては、自動車を作って在庫しておくと言うことなのかも知れない。自動車は比較的在庫期間が長い資産ではあるしね。しかしながら、それが必ず後で売れるという保証はないし、不良在庫化するリスだってある。そのように考えると、今回の経営判断は企業のB/Sを汚しているだけであり、株主を初めとしたステーク・ホルダーへの裏切り行為のようにも思える。

 私としてはこの方針転換には反対で、どのような汚名を受けようとも、現経営陣は従前の方針を貫いてほしかったな。

 それにしても、純粋に彼らの生活のためだけに雇用を続けるというのは(それも、以前の決定を覆して行うというのは)、勇気の要る行為だとは思う。これで、いすゞの経営陣が責任を取って報酬の大幅カット(年収100円とかね※ビッグ・スリー並みに)すれば、少しは見直してもらえるのだろうか。

 いずれにしろ、非正規雇用の問題は奥が深い。また日を改めて書いてみたい。