週刊東洋経済 2004年01月17日号

 今回は、「週刊東洋経済2004年01月17日号」の書評です。・・・週刊誌の書評を書き出すと結構大変なことになるかも(1年間もつのか)。

健康元年!

最強のクスリ学

 まず、もっとも関心の高い病気別のクスリに関する解説です。
1.ガン
 ガンは怖いですねぇ。他人事ではありません。働き盛りのビジネスパーソンの亡くなる第一要因はガンだそうですから。ここでは、「早期発見に勝る生還術なし」ということで、早期発見のためのいくつかの方法が紹介されています。ガンの治療法の一つである化学療法(投薬)は日本では、「我流処方が横行する」とのことで、インフォームドコンセントなどの必要性が述べられています。こういう話を読むと、常に自分が信頼できる医者を確保しておくことが重要だと痛感します。
 働き盛りを襲う3大ガンである「胃ガン」、「大腸ガン」、「肺ガン」については特にページを割いています。いずれも、早期発見の段階であれば、外科手術を行わなくても治療する方法がいろいろあります。
2.SARS・インフルエンザ
 今年の冬はインフルエンザワクチンの不足が深刻化しています。SARSとインフルエンザとが初期症状が似ていることから、診断を容易にするために予防接種を行う人が例年より多いためです。今年も海外で新たなSARS患者が見つかったことがニュースになっています。SARSにはまだ特効薬というものがなく、対症療法が主だそうです。その予防にはマスクが有効であると述べられています。
3.糖尿病
 次の高脂血症と同様に飽食の時代の病気とも言えるのが糖尿病です。糖尿病に対しては前述のガンほど危機感がないというのが問題だそうです。生活習慣を改善しなくてはならないというのがいやなのでしょうか。運動は欠かさずにしなければなりませね。(私も人のことは言えません。)
4.高脂血症
 投薬だけではなく、生活自体を改めなければならないと言うのがこういった病気のやっかいなところです。食生活が西欧化して肉類を多く食べるようになりました。食事だけではなくサプリメントも有効だと書かれています。
5.関節リウマチ
 難病の関節リウマチに夢の新薬が登場したという話です。でも、年間130万円必要で、個人負担3割だとしても40万円はかかるという代物です。他のクスリとうまく組み合わせて使用することが必要だという話です。
6.生活改善薬
 ストレス社会の中で問題視される、「不眠」、「肥満」、「喫煙」の悩みを解消しようと言うものです。
 睡眠改善薬としては医師の処方箋なしで購入できる薬が紹介されています。依存性も少ないと言うことです。
 抗肥満薬としては、国内では医療用の薬品しかないが、数年後の発売を目指して多くのクスリが開発中だそうです。
 禁煙薬としては、禁煙ガムやパッチがあります。私自身は喫煙しないので、喫煙に対する依存症は理解できないのですが、禁煙薬の市場が最近急激に拡大しているところをみると、相当大変なのでしょう。

激震直撃!?

「クスリ業界」学

 前半の記事では、経済誌らしいところがありませんでしたが、このあたりは経済誌らしい切り口です。日本のクスリ業界にもグローバルスタンダードの波が押し寄せてきています。M&Aによる吸収合併がおこり業界内の再編が進むとあります。特に、外資が国内市場目当てに積極的に参入してくるだろうと予測しています。
 それから、ドン・キホーテで話題になったテレビ電話による薬の処方の話も紹介されています。業界内の諸事情から薬販自由化に対する推進派と反対派の攻防などは、相変わらず消費者抜きの議論になっていて悲しいものがあります。
 最後にクスリ業界の就職事情についての記事です。この業界は「就職氷河期」とは無縁だそうで、慢性的な人材不足が続いているそうです。クスリ業界には何かと資格が必要なのがその理由なのでしょうか。私の友人の女性は薬学部出身でしたが、調剤薬局に行きました。医療情報担当者(MR)は仕事が厳しいそうでそこにはあまり行きたがらないそうです。MRはクスリ自体の知識はもとより、コミュニケーションスキルなどのヒューマンスキルも必要とされるそうなので、中途社員など社会人としての経験のある人を採用する向きも盛んなようです。
 というわけで、経済誌のわりにはあまり経済とは関係のない特集でした。こういった健康の話も、「対象の読者が働き盛りのビジネスパーソンで健康に関心が高い」というところから組まれているのでしょう。年間に何度となく特集として取り上げれられています。

日経情報ストラテジー2004年02月号

 今回は「日経情報ストラテジー2004年02月号」の書評です。この雑誌は前の2雑誌よりも幾分早く手元に届いていたのですが(2004年02月号なのにですよ)、年末年始のどたばたで読む順番が最後になってしまいました。

特集1

次世代CIOを育てる

第一部 優れたCIOは偶然の産物か

第二部 深い専門性を備えた経営者を育てる

 現在の企業において「経営戦略」と同じように重要なものが「情報化戦略」です。もはや情報化なくして企業の生き残りはないと言えるかも知れません。これら2つの戦略は互いに独立して存在するわけではなく、お互いに深く関係し合っています。現在では、「経営戦略」を立案してからそれに合わせて「情報化戦略」を練るのではなく、両者を同時に立案する向きがあります。
 この情報化戦略を立案するために中心的な役割を果たすのが、CIO(情報戦略統括役員)です。情報化戦略の重要性が増すにつれ、このCIOの役割も重要になってきています。
 つまり、優れたCIOを擁する企業は、優れた情報化戦略を立案でき、その情報化戦略が企業の競争力を強化し、市場における有意性を築くことができるというわけです。
 第一部「優れたCIOは偶然の産物か」では、CIOの選任のされ方に疑問を呈しています。企業内でCIOを勤めている人はどのような人たちなのでしょうか。
 多くの企業のCIOは、その企業の情報システムの発展してきた経緯によって変わってくるそうです。例えば、情報システムが経理システムを元に発展してきたものであれば、経理部長クラスの人で情報システムに詳しい人がCIOに就任するなどです。つまり、多くの企業ではCIOを体系的に育成するカリキュラムは整っていなくて、たまたまいちばんCIOにふさわしいと思われる人がCIOに就任するとあります。
 第二部「深い専門性を備えた経営者を育てる」では、CIOを養成するために、特に社外の各種養成機関を紹介しています。これらの専門養成機関では、ビジネスモデル、リーダーシップ、企業における情報技術などCIOに必要とされるスキルについて集中的に学習するようになっているようです。学習形式も単なる講義形式ではなく、ケーススタディやロールプレイングなどを盛り込んだ内容になっています。
 CIOに求められるのは、こういった一般的なスキル+その企業の属する業界や市場の乃至その企業そのものの知識ではないかと思われます。

特集2

有力企業417社調査

IT投資で成果出す

変革型CIO

 特集2も、CIO関連です。「変革型CIO」というもの定義して、「変革型CIO」を擁している企業と「従来型CIO」を擁している企業との業績の比較を行っています。
 変革型CIOとは、「社内で変革をおこしやすい立場にある人」で、かつ「ITを活用した抜本的な改革を行うことを使命として明確に与えられている」CIOであると定義づけています。つまり、変革型CIOの目的は単なるコスト削減や業務の効率化ではありません。ITを軸とした新たな業務プロセスの創造がその主任務となります。
 株式を公開している企業やそれに準じる企業417社から得られたアンケート結果を元に、各企業のCIOがこの2つの型のどちらであるかによって、業績にどのような差異が生じているのかを検証しています。売上高対総利益率の改善率では7倍もの差がついたと書いてあります。
 記事では、いくつかの企業とそのCIOを例に挙げて、業績改善までの道のりとその時にCIOが果たした役割について紹介しています。
 私の意見です。
 創造の前には破壊があります。(どこかの大手電機会社か?)人間は新しいことに対して基本的に抵抗するものなので、従来の業務のやり方を辞めて新しい業務プロセスを構築しようとしたときには、想像を絶する抵抗が生じることでしょう。この抵抗に屈してしまっては、「変革型CIO」と呼べません。抵抗(コンフリクト)を封じるには、前述の「立場」や「使命」のような強制力だけでは駄目でしょう。下手に強制すると相手はさらに反発を強めてしまいます。コンフリクトの解消には「プレゼンテーション」、「コミュニケーション」、「コンサルテーション」などを通した相互理解が必要です。
 変革型CIOには、このようなヒューマンスキルも求められるのです。

日経アドバンテージ2004年01月号

 日経アドバンテージ2004年01月号の書評です。日経アドバンテージと前回の日経ITプロフェッショナルは毎月下旬に同時に送られてくるので、読むのがたいへんです。(^.^)

特集その1
「個客」満足度を劇的に高める
コミュニケーション革命


 インターネット技術のエンタープライズ分野への応用を軸に顧客と企業とを結ぶさまざまな手段を紹介しています。両者のコミュニケーションをより深めることにより、「個客」満足度を高めようというのがこの記事の趣旨です。
 書評を書いていて気づきました。タイトルは「顧客」ではなく、「個客」です。つまり、顧客をひとくくりにしているのではなく、相手先にあわせたきめの細かいコミュニケーションを行うことを標榜しているのですね。
 まず、総論として、「情報開示で納得性と安心感を」とあります。顧客と企業とのコミュニケーション手段が多様化している現在では、顧客情報をあらゆる部署で一元管理する必要があります。顧客がどの方法で問い合わせを行っても、正しく迅速に受け答えのできるシステム作りが必要です。納期の回答なども、進捗情報を開示することで信憑性が増し、それが安心感へとつながり、リピート率の向上へとつながるとあります。
 次に、各論として以下のような項目を挙げて、それぞれ具体的に企業でどのように実践されているのかを紹介しています。
・情報の共有:全社員一丸で顧客対応へ
・リアルタイム:企業の動きは全てWebで
・顧客接点の増加:Web上に仮想オフィス創造
・クイックレスポンス:すばやい対応が信頼につながる
・情報の統合:FAXや音声もWebで管理
 いずれの企業も業態の特性に合わせた工夫を凝らして「個客」の満足度向上に勤めています。

特集その2
”お得意様”とのきずなを強く密に
携帯が販促の常識を変える


 多分すでに皆さんが持っている携帯を、販促の道具としてどう役立てるのかを事例を挙げて紹介しています。
 すぐに思いつくものとしては、DMを出す。携帯用のサイトを立ち上げるなどです。
 でも、ここで紹介しているのは、これより一歩先を行く、新しい携帯の販促ツールとしての使い方です。
 携帯は各人が「肌身離さず持っており」、「リアルタイムで情報を送る(または受け取る)ことができる」ツールです。その特性を生かした販促ツールとしての用途が紹介されています。

特集その3
カルソニックハリソン
全方向型の顧客満足度経営で”下請け根性”を払拭


 カルソニックハリソンはカルソニックカンセイの子会社であり、自動車用のエアコンのコンプレッサー部品製造会社です。その会社が「顧客満足度経営」をキーワードに、どのようにして困難な状況に立ち向かっているのかを紹介しています。
 カルソニックハリソンは単なる「顧客満足度」ではなく、「顧客の顧客の顧客満足度」というように、最終消費者まで含めた全ての顧客や、そこで働く従業員(これは、ステークホルダーに近いか?)の満足度の向上を目指す経営を実践しているようです。顧客満足度を定量的に測定するため、アンケート調査を実施するなど積極的な情報収集に努めています。
 同社では、
 顧客である自動車部品メーカーを「人」、
 顧客の顧客である自動車メーカーを「地」、
 最終消費者である自動車ユーザーを「天」
と呼んで、その「天地人」の満足度を定量的に調査しています。
 この雑誌は、中小企業が多く出てきます。小さいからこそ小回りが効いて時代に迅速に対応できる、そんな中小企業がたくさん紹介されています。読んでいてとても面白い雑誌です。

日経ITプロフェッショナル2004年01月号

 以前、たくさん雑誌を定期購読していると書きました。読んだ内容を整理する意味で、それらの雑誌の書評を書いていこうと思います。(今年の目標です。・・・いつまで続くかな。)
 初回は、日経ITプロフェッショナル2004年01月号です。

特集1
「ユーザーが悪い」で終わらせない
今こそ身につける要求定義の”定石”

 私もソフトウェア業界に身をおくものとして顧客の要求定義には悩まされます。顧客立会いでテストする段階になっての「仕様追加」、「仕様変更」の数々。そういう顧客に限って、要求定義をおろそかにしていがちなのです。「ものを見てから機能を追加すればいい。」という意識があるのでしょうか。
 第一部ではITエンジニアを対象としたアンケート結果を元にベンダー側と顧客側の意識の違いはどこにあるのかを探っています。(そういえば、このアンケートは私も参加したような。)
 第二部では成功に導く4つの必須スキルと称して、「ヒアリング技法」、「業種・業務知識」、「要求定義の方法論」、「要求をモデル化するための図法」を挙げて、それらを解説しています。「ヒアリング技法」といえば、コーチングでやったぞ。
 第三部では要求定義の方法論を知るというテーマで、DOAをとりあげています。いまさら、DOAか?というむきもいるという前提で、IBM-DOAという、IBMで実践されているDOA手法に関する解説がされています。
 第四部では引き続いて方法論としてオブジェクト指向に基づく方法論を理解することがテーマです。ラショナルソフトウェア社のRUPをとりあげて、RUPに基づく要求定義手順を紹介しています。
 第五部ではヒアリングの実践ノウハウを紹介しています。このノウハウは要求定義段階以外でも役に立ちそうです。
 第六部は「要求工学」です。私自身、この言葉を聞いたのは初めてでした。ソフトウェア工学の一分野として最近注目を集めているとのことです。PMBOKのようにまだ十分体系化できていないそうですが、このようなフレームワークがユーザー側とベンダー側とで共有されれば、要求定義もずいぶんスムーズに行くのではと思います。

特集2

プロジェクト運営で失敗しないために

組織作りの考え方、進め方

 プロジェクトを行うときはプロジェクトチームを作るのですが、その運営に失敗しないために、どのように組織を作ればよいのかというのがテーマです。
 経営学の組織論の話ですね。
 機能別組織、マトリックス組織(3段階)、プロジェクト型組織の5種のモデルを中心に各モデルにおける長所、短所について述べられています。
 また、組織に必要なコミュニケーションについても垂直型、水平型をとりあげ、それぞれがどのようなシステム開発に向いているのかについて論じられています。垂直系は管理・統制に向いているので大規模システムの開発に向いており、WEBシステムのように短期開発プロジェクトでは水平系のコミュニケーションが向いているそうです。実際には、これらの組織とコミュニケーションを組み合わせてカスタマイズする必要があると結論付けています。また、過去の遺産のような組織(筆者はこれを惰性的な組織と呼んでいます)には限界があるとも述べています。・・・まさにそのとおりですね。個人レベルでのコミュニケーションツールが発達した現代の特性を十分に活用するためには、旧来の組織およびコミュニケーションでは無理でしょう。過去の組織論は過去の「組織内での情報伝達」が前提です。
 というわけで、書評でした。コラムやほかの連載は割愛します。そこまで書いていたら、ページがいくらあっても足りませんからね。(^.^)

定期購読

 定期購読の雑誌が多すぎて、読むのが大変です。
 ざっと数えてみても、
週刊誌:
 週刊東洋経済
月刊誌:
 JWings
 日経情報ストラテジー
 日経システム構築
 日経ITプロフェッショナル
 日経アドバンテージ
季刊誌:
 Think!
 これだけあると、通勤電車で暇ができません。(^^)
 おかげで部屋の中は雑誌だらけ、山積みされています。
 日経BP社の雑誌は毎年縮刷版のCD-ROMが出るので、それは必ず買っています。縮刷版のCD-ROMは定期購読の読者だと結構安く購入できます。
 「定期購読で少しお得+縮刷版CD-ROMがお得≧縮刷版CD-ROM通常価格」
ではありますが、その差はわずかですし、雑誌が丸ごと手に入るので、本人としてはお買い得感があります。
 でも、雑誌の数を減らして一冊あたりもっと丹念に読むべきかな。
 難しい選択です。