ファンドで被災企業を支援するという話

 東日本大震災で復興支援のために募金活動をした人も多いと思う。募金は非常に簡便で、かつ効果的な支援方法である。私も幾ばくかのお金を会社や街頭、そして団体に募金した。

 しかし、募金したお金がどこでどのように被災者のために役立ったのか、知りたいと思っても追跡することは難しい。それは募金活動の構造的な問題である。支援の効果が支援者にとって見えにくいと言うデメリットがある。支援の実態を支援者側に開示する仕組みがなければ、モラルハザードの発生を防げないのではないかと思うこともある。

 一方で、ボランティア活動というのは、ピンポイントで困っている被災者を救うことができる。支援したい人たちに直接働きかけることができる。しかしながら、実際にボランティアを行うことは、会社勤めの人などにとっては非常な困難を伴うし、腰も重くなる。

 私は、簡便な支援で、支援の効果がよく見える方法はないかと模索していたが、近頃紹介されたファンドによる支援というのが興味を引いたので紹介する。

 被災地の復興のためには、地元の中小企業の再生が欠かせない。しかし、中小企業を支援するべき地元金融機関は自分たちの存続が先決で、被災した中小企業に融資を行うための体力が残っていない。中小企業に融資を行うためには、彼らの事業再建計画を正しく評価する必要があるが、そのための人的、金銭的な余裕がないのである。金融機関からの融資が受けられない中小企業は、被災した設備を修理したり新規に購入しなおしたりするための資金を得ることができず、再建は遅々として進んでいない。

 そこで、小口ファンドを専門に扱う民間業者が被災した中小企業を審査してその再建可能性を探り、その結果に基づいて広く一般から小口の融資を募集し、そのお金を当該企業に貸し出すという仕組みで支援していこうというものである。もともとこの業者は音楽家のためのファンドを運用していたようで、社名にもミュージックという名前がついている。もちろん現在でも音楽家の支援は行っているが、被災地域の企業のためのファンドもたくさん開設されている。

 ファンドであるから、元本割れを起こす可能性もあるが、再建が予定以上に進めば、利益の何割か利息として返ってくる可能性もある。

 被災した人たちを利用して金儲けをしていいのかという議論もあるとは思う。日本にはリスクマネーという考え方がまだ根付いていないので、ファンドというものに対する抵抗感がある人がいるかも知れない。マイクロファイナンスという考え方に基づいてバングラデシュの貧困層を救っているムハマド・ユヌス氏のように、今までにない新たなやり方として注目されるのではないかと思っている。

2012年4月7日 | カテゴリー : ニュース | 投稿者 : assak