【BCP、事業継続計画】 中小企業庁が中小企業・小規模事業者向け「強靭化法案」提出へ

 経済産業省・中小企業庁が、2019年1月の通常国会に「中小企業強靱化法案(仮)」を提出することになりました。中小企業強靱化法案(仮)とは、昨今頻発している大規模な自然災害などに対応するものです。中小企業・小規模事業者が事業継続計画(Business Continuity Plan、以下BCPと呼ぶ)を策定するなどして災害に対する準備を行った場合に、インセンティブを与える施策が盛り込まれる見込みです。ここで言うインセンティブとは損害保険料などの割引や政府系金融機関からの低金利融資、補助金、税制優遇などになる見込みです。

 内容に関してはこれから詰めていくことになるようですが、中小企業・小規模事業者への自然災害などのリスクに対する啓蒙としての意味合いが強いと思われます。

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 BCPに関しては、中小企業庁はミラサポなどを通した専門家派遣制度を設けていますが、その活用状況は低いのが実情です。国や地方自治体が啓蒙し、警告していてもなかなか事前準備はされません。

 その理由としては、災害が起こるたびに言われる「自分は大丈夫だと思っていた」「いつか起こるとは思ったがまさか今日だとは思わなかった」などに象徴されています。つまり、自分にとって不都合なことを過小評価すると言うことです。これを正常性バイアスと言います。

 正常性バイアスとは、人間の心理バイアスの一つです。人間は異常事態よりも正常な状態を望むものです。そのため、異常事態が起こることがわかっていもその可能性を過小評価したり、異常事態の兆候が現れてもそれを一過性のものとか計測の誤りとかだと思い込むようにしたりする心理状況が生じます。そのため、異常事態への対処が遅れて被害が拡大するというものです。過去に韓国にて地下鉄の火災事故があり大勢の人が犠牲になりましたが、もっと早く脱出していれば被害を少なくすることが可能だったと言われています。生き残った方の証言からは、火災の初期段階で車両から煙が出ていても誰も逃げ出さなかったそうです。誰でも火災という緊急事態が自分の身に降りかかっているとは思いたくない、他の人がまだ逃げ出そうとしていないから大丈夫、という心理状況が脱出のタイミングを遅らせたことが指摘されています。

 国や地方自治体のこれまでの施策は重要拠点を守ることに主眼が置かれており、民間事業者の災害対策は基本的には事業者任せでBCP等も無料の専門家派遣のみで対応ということが多かったです。やはり補助金などインパクトが必要かと思っていたところでした。補助金は、ばらまきだと批判を受けることも多いですが、民間事業者を施策に誘導させるためには有用な方法ではあります。

 日本国内では大規模災害として南海トラフの巨大地震など高い確率で起きることが想定されているものがありますし、国や地方自治体は予算を割いてその準備・対策を進めています。しかしながら、民間ではそこまで準備を進めていない事業者もあり、準備不足による被害の拡大も予想されています。現段階で準備を行うことにより被害の低減が可能なので、今回の「中小企業強靱化法案(仮)」はそのための施策ということになります。

 「中小企業強靱化法案(仮)」は、これまでの無料専門家派遣などの施策に加えて、実際にBCPを策定するなど災害対策を具体化した事業者に対してさらなるインセンティブを与える仕組みとなっています。「チュ小企業強靱化法案(仮)」で盛り込まれる見込みの各種施策に関しては不明ですが、補助金などは大きなインセンティブとなることが予想されます。

 「中小企業強靱化法案(仮)」の施策によって万が一大きな災害が発生しても事業者の被害が最小限になることを祈念しています。