未来世紀ジパング(2012/07/30放送分)

幸福度vs経済成長…幸せの国が教えること:前編】と題して、池上彰氏と宮崎美子さんがブータンの国の現状を視察して、幸福とは何かを考える・・・ということかな。
ブータンのGDPは14億ドルで日本の4,000分の1ということで、GDPで言えば最も貧しい国の一つに数えられる。それでも、国民の97%が「幸せ」だと答える国だそうで、本当の幸せとは何なのか、日本の未来を考えるという大きな話。
ブータンの今を作ったのは先代(第4代)の国王(ジグメ・シンゲ・ワンチュク国王)で、王政を廃止して、立憲君主制を導入したそうだ。そして、50代で息子の現国王(ジグメ・ケサル・ナムゲル・ワンチュク国王)に王位を禅譲して、今は身分を隠して国内各地を漫遊しているという。まるで水戸黄門だ(これは番組内でも言っていた)。GNH(Gross National Happiness:国民総幸福量)という指標を提唱して、それを国政に反映させたということだ。
ブータンと日本の関係と言えば、日本人の農業指導者で、ブータン農業の父と言われて「ダショー」というブータンにおける栄誉ある称号を贈られた西岡京治(ダショー西岡)氏が出てくるかなと思ったが、やはりこの番組でも紹介されていたね。亡くなったときはブータンで国葬が執り行われたというから、偉大だよね。
ところで、池上氏が、「ブータンでは物々交換が主流だ。GDPは市場を介した売買しか計算されないので、実際はブータンは豊かなのだ」というようなニュアンスのことを言っていた。物々交換が活発に行われているのは確かだし、GDPが市場を通した売買しか積算されないのも事実だが、そうだからといって、ブータンが豊かだとはならないだろう。物々交換を市場活動に換算したらどのくらいなのかという検証がないとGDPが低くても生活が豊かだという話にはならないはずだ。
そういう揚げ足取りはよしとして・・・。
GNHを国政の指標に上げたブータンだが、そのGNHを具体的なビジョンに落としたものが次の通り。
・持続可能で公平な社会経済開発
・環境保護
・文化の推進
・良き統治
って、これってその他の国にも当てはまる一般的なビジョンじゃないの??日本のどこかの政党のマニフェストにも書いてありそうなことだ。と思ったら、ブータン政府にはGNH委員会というものがあり、それが(組織図上は)首相と同じ権限を持っている。(番組で紹介された組織図は本当に正しいのかな?政府内のガバナンスはどう働くのか?)そして、国民に対して(幸福に関する)アンケート調査を行って、その結果をベースに国政を行っていると言うことらしいが。
という感じで、前半はブータンっていい国だな~~という論調だったが、後半はその影の部分の紹介。
まずは、ブータン国内のインターネットカフェにたむろする若者。そこでは、若者がネットゲームに興じていた。そして、建設ラッシュにより、外国人(ほとんどがインド人)労働者の増加。自動車の販売台数の増加(ヒュンダイと、インドスズキだと言っていた)による交通事故も増加。(そういえば、ブータンの首都では、前国王が「ブータンには信号機は似合わない」と言って、全信号機を廃止したとか。それで、交差点では警官とおぼしき人が交通整理をしていた。)さらに外国製品の流入により、外貨の流出が続く。番組ではスマフォがブームだと紹介していた(価格は平均月収の倍以上!)が、そうした外国製品を輸入しても、ブータンは海外に輸出するものがあまりないので、輸入過剰の貿易赤字状態が続く。主にインドのルピーで支払っているようだったが、国内の準備高が不足して、輸入制限をかけたそうだ。その結果、需要過多で物価が上昇。インフレだ!(野菜が2倍と言っていた。)
若者たちが物質的な豊かさを求めて海外の製品を買いまくり、西欧諸国のようなファッション、生活に憧れることで、ブータンらしさが失われるのではないか・・・。という危機感がある。
しかし、池上氏は前編の最後に「それでもブータンの豊かさは揺るがない」と言っていた。それは「足るを知る」ということだと言っていたが、詳細は次回の後編に託されるのかな。

ブータンに貨幣経済が導入されてまだ40年と言うことだった。調べてみるとその前はブータン・ルピーを使っていたとあった。ドル・ペッグならぬ、ルピー・ペッグ制だったのかな?いずれにしろ従前はあまり貨幣を使わなくても自給自足で生活できていたのだろう。
そして、ブータンの首都や主要都市が西欧文化に染まってしまうのは、致し方ない気がする。しかし、そうなると、都市と農村で貧富の差が広がり、さらなる都市への人口の流入、農村の過疎化が進むという、どこの国でも経験した経緯をたどるような気がする。