言わずと知れた手塚治虫の漫画ブラックジャックがテレビ(CS)で放送されたのを見た。
ま、私も手塚治虫のブラックジャックのファンなのでちょっと楽しみながら見たのだが。
その第1話。悪徳実業家の不良息子が交通事故を起こし、ブラックジャックがその手術をする。しかし、手術には交換のための肉体が必要であり、そのために父親の悪徳実業家が、落ち度のない少年を罪に陥れてその健康な肉体を手に入れようという話。
この話の原作である漫画版、実は私にとって、ブラックジャック全編を通して納得がいかない話のNo.1なのである。
ブラックジャックという漫画は命の大切さを訴える作品であり、その作中でブラックジャックは殺人犯の瀕死の少年すら助けたこともある。なのに、この第1話でブラックジャックは、その事故を起こした不良息子を殺してしまうのである。そして、無実の罪を着せられた少年の顔をその息子そっくりに整形し、国外逃亡を助けてあげる。
つまり、ブラックジャックが殺人を犯したという話なのである。私の知る限り、正当防衛や不可抗力を除いてブラックジャックが作中で殺人を行ったのは、この話だけである。
で、テレビ版ではそこのところがどうなっていたかというと、その不良息子はブラックジャックが処置をする前に息絶えていたという設定になっていたのである。さすがにアニメの制作者もこの話の不自然さに気付いたのだろう。
ということで、アニメのブラックジャックは殺人を犯さなかったのだけれど、原作では「処置の前に死んでいた」という表現はなく「腐りきった人間は手術しても無駄だ」とまで言っているので、明らかに生きている患者を意図的に殺したという含みがある。手塚治虫は何故に第1話にこのような全編を否定するような話をもってきたのか。
手塚治虫が原作の第1話を描いている頃は、ブラックジャックに対する思いが違ったのであろうか。その後のブラックジャック像とは違う、もうちょっと冷酷な医者という考えだったのだろうか。
正月早々、ちょっと気になった。(^-^)/