オイコノミア

NHKのEテレで放映されていた経済バラエティ番組です。社会で起きるの様々なことを経済学の知見を生かして面白く解説していきます。
出演は又吉直樹さん、解説は主に国内の様々な大学の研究者の方、ナレーターは朴璐美さんです。

オイコノミアのレビュー記事

オイコノミア(2012/11/20放送分)

「スポーツ選手が夢だった・・・!?」(前編)
スポーツをテーマにした経済学の話の前編。今回は大竹文雄教授がゲスト。でも、寄せ集めの内容だった。一つ一つはおもしろかったけれどね。
・U19では早生まれが有利というのは、U19は「数えでその年に19歳になる人」までが参加できるため。つまり、早生まれのほうが年上となり、競技では有利になる。学業では逆に早生まれはマイナスになることが多い。
・ルイス=シュメリングの逆説は、ボクシングの試合に関する話であり、経済学上に初めて登場したスポーツの話題である。意味は、「圧倒的に強いものと弱いものとの試合よりも、実力が拮抗しているもの同士の試合のほうが観客動員が多くなる」というもの。試合の結果が予想できないので、多くの人が興奮するということ。一般的には圧倒的に強い選手やチームを育てることが興行的に成功するように考えられるので、「逆説」となるわけ。番組では登場しなかったが、プロ野球で巨人が圧倒的に強かったときに人気も高かったことをどう説明するのだろうか?。その後のプロ野球の衰退はまさにそうかも知れないが。
・ロンドンオリンピックのバトミントンの予選での、無気力試合については、始めから決勝トーナメントの組み合わせが決まっているので、どのチームも出来るだけメダルに近づこうとして、組み合わせが有利になるように予選でわざと敗退したというものだが、これはそういう仕組みを作る側に(も)問題があるということ。各国チームがメダルを目指しているのであれば、そのために全試合全力でプレイするインセンティブが働くような仕組みを作る必要がある。
・国別のメダル数の予測方法で、とある経済学者がロンドンオリンピックの国ごとのメダル数を予測していたが、かなり良い数字だった。その予測は何を基にしたかというとGDPだった。GDPは「人口と一人あたりの所得の積」だが、国が豊かであれば、それだけスポーツに対する予算も付くというもの。そのため、GDPはメダル数の予測に使えるということだった。
・動くストライクゾーン、米国メジャーリーグではすべての投球のコースとその判定(ストライク、ボール)がネットにアップされているというのは初めて知った。これくらいオープンな取り組みを日本でもやってほしいものだな~。同じコースでもストライクとボールに判定が分かれるそうだ。例えば、ボール3の状況であるコースに投げたらストライクになったのに、ストライク2で同じコースがボールになるというような事例はよく見られるということだった。これは、不作為バイアスと呼ばれるもの。これは、自分の判断で結果に影響を与えたくないという心理が働くというもの。しかし、ここでの又吉さんの「サッカーでも厳しい審判がペナルティ・エリア内では笛を吹かない」という例示はすごいと思った。さすがサッカー好きなだけのことはあるな。

今回は広範なネタの寄せ集めという感が強かったが、初見の話も多かったので結構楽しめた。

オイコノミア(2012/11/13放送分)

「賃貸暮らしもいいけれど・・・!?」(後編)
今回は
・一軒家、マンション:いろいろな設備が付いているという点からはマンションといっていたが、一軒家の魅力は?
・新築、中古:新築の場合は宣伝広告費も付いているので、割高。第一期販売というような段階的な販売方法については、価格の人気見合いのための手法だといっていた。中古物件に関しては、住宅性能表示の話をしていたが、これは経済学の話かな?まずは、レモンの市場から話を進めた方が良かったのでは・・・。
・住宅ローンの仕組み:固定金利と変動金利の話をしていた。それから、割引現在価値の話になったが、複利の話はなかった。確かに過去の放送で出てきたが、だからといって省略か?、全く触れていないのはどうかと思うよ。
・近所付き合い:ゲーム理論を使って隣近所との付き合いをどうしていくかという話をしていた。これは少しおもしろかった。
についてだが、あまり深い話ではなかった。
出てきたキーワードとしては
・インセンティブ:持ち家は賃貸よりも、大切に使おうという気持ちが働くという意味で使っていた。普通にマネジメント用語として使われている意味からは飛躍しているかも。
・規模の経済:マンションでは一軒家では難しい、フィットネスジムや、場合によってはプールなども付いているということを指して使っていた。確かにそうだが、何だか無理矢理って感じがしないでもない。
・割引現在価値:今は金利がほとんど0だから、割引現在価値という実感があまりないので、金利5%を想定して話をしていた。今回のキーワードの中ではいちばんちゃんとしていた。
・繰り返し型ゲーム:隣人との付き合いをお互いどうするかを、「気を遣う」「気ままにする」の2つの戦略で分類していた。繰り返し型ゲームであれば、お互いが良い関係を気付く方向に動くという話だった。囚人のジレンマとの違いまで言及をすれば良かったのだが、そこまでは出てこなかった。

今回のテーマ、経済学のキーワードを出してこようという意図は感じるが、少し空回りの感があった。住宅というのはテーマとしては広すぎか?一軒家と共同住宅程度に絞って深掘りしたほうがおもしろいかも。

オイコノミア(2012/11/07放送分)

「賃貸暮らしもいいけれど・・・!?」(前編)
賃貸か、持ち家かという話。ゲストは、安藤至大さん(日本大学大学院総合科学研究科准教授)。
解説としては以下のようなもの。
1.家から受ける効用は、新築時がいちばん高くてその後下がっていく。でも、賃貸であればいつでも条件の良い部屋に借り換えられることから、効用と時間の積(グラフの面積)は賃貸のほうが高くなる・・・という。
2.個人の資産運用という観点から、家を所有すると資産のバランスが悪くなる。・・・つまり、現金預金や株式などへのバランス良い投資ができない・・・という。
3.家を買って自分で住むと、他人に貸すという機会費用を失っているという。
こういう話になると賃貸を勧めているのかと勘ぐってしまうが・・・。

でも、何だか違和感がある解説なんだよね。反論としては以下の通り。
1.は条件の良い部屋のコストは家賃に反映されているはず。また持ち家でもリフォームなどを行うことは可能なので一概にグラフのようにはならない。また、家賃とローンの大小関係は具体的な数値で比較しないと何ともいえないのではないか!
2.も同じで、家賃あるいはローンの金額を具体的にしないと、残りの可処分所得の資産運用の話はできないのではないか!
3.も、実際に持ち家を所有していても、他人に貸し出して、自らは賃貸に住んでいる人もいることだし、機会費用の損失にはならないでしょ!
番組の展開の仕方としては、今回のような点よりも、実際に家賃とローンとで支払金額を比較し、ローン完済後の残存価値も含めてトータルで損得を話したほうがおもしろいと思う。それから、固定資産税とかの話への展開もできたのに。うーん、どうしてそうしなかったのだろう。つまり、正常な物件であれば、賃貸では家主が介在してその人への収入が発生していることを考えると、その分だけ店子は余計な支出をしていることになる。それは家主の不労所得になって・・・というように、話が持って行ければ良かったのでは?

後半はヘドニック・アプローチの話。ヘドニック・アプローチとは、住環境の価値を計測する手法として有名なもので、土地や建物などの価格と特性に関する大量の属性を、軽量統計学的手法を用いて算出するもの。でも、番組内での説明は非常に不十分だった。

今回の経済学的な話はあまり当を得ていない気がした。もっとちゃんと構成してほしいな。構成はディレクターがしているのかな?それともゲストの大学教授がしているのかな?いずれにしろ複数の人によるクロスチェックが望ましい・・・。
ということで、今回の内容はストレスがたまったな・・・。

オイコノミア(2012/10/30放送分)

「旅のお供に経済学!?」(後編)
引き続き、大竹教授と浅草を観光しながら旅行に関する経済学の話。
今週は又吉さんが自分の旅行のプランを練りながら、それに大竹教授が解説を加えるという形式だった。
出てきたキーワードは、次のようなもの。
・「メンタル・アカウンティング」は同じ金額でも使う場所によって感じ方が違ってくることで、旅先でついつい財布のひもが緩くなることをさして言っていた。
・「ネットワーク外部性」また出てきた。旅の行き先に関して、皆によく知られているところに旅行に行くと、帰ってから土産話に花が咲くことになる。
・「集積の利益」は産業や人が1カ所に集中していることで得られる利益で、観光地などで同じようなお土産屋があることで、店同士の競争が生まれて観光者は安く商品を得ることができると言っていた。
・「競争市場と独占市場」に関してもおさらい。高級ホテルと格安ホテルの話で、高級ホテルは独占、格安ホテルは競争が激しいという話をしていた。
・「異時点間代替(inter-temporal substitution)」なんてのも出てきた。これは、財やサービスの消費をする時を変更できるものの事を指す。番組では、食事、睡眠は異時点間代替ができない、出産も長いスパンで考えると異時点間代替ができないと言っていた。異時点間代替に関しては、うまく利用すると「安く」ものを購入したりサービスの提供を受けたりすることができる。例えば、休みの日は行楽地は多くの人出でごった返し、料金設定も高め、待ち時間が発生したりするが、平日であれば、安い料金で、待ち時間無しでサービスを利用できるなど。つまり、休日を異時点間代替できる人は、それを使って平日に行けば良いと言うことになる。番組では、異時点間代替は景気変動を生むという話になっていたが、もうちょっと突っ込んだ話をしてほしいと思った。

オイコノミア(2012/10/24放送分)

「旅のお供に経済学!?」(前編) ということで、旅にまつわる経済学の話。ゲストは大竹文雄教授。内容は又吉さんが街頭で旅行に関してお金に纏わる疑問を聞いて回るというもの。そして、その疑問点に大竹教授が答えていくという形で番組が展開。
1.子供料金、大人料金
 ・子供料金が安かったら家族で旅行しようとするインセンティブが働く。
 ・価格差別により利用者を増やす。映画館や行楽施設も同様
  ・・・価格差別は先週の話とダブっているぞ!
2.飛行機の料金が安くなる(LCC)
 ・コストカット(チェックインカウンターの電光掲示板や、アナウンスの設備費の削減、ボーディングブリッジ未使用、駐機時間の短縮、CAによる機内清掃、新造機を導入することによりメンテナンス経費の削減)
 ・シートのピッチを狭くして乗客数を増加
で、LCCに関して「ベルトラン競争」の話が出てきた。これは、「価格競争がおこると価格は最終的に限界費用まで下がる」というもの。
最後に、電車の料金における競争の話として紹介されたのが、京都駅から神戸駅までの料金。JRで京都駅から神戸駅までの切符を買うと1,050円かかるが、大阪まで(540円)行っていったん改札を抜けて神戸までの切符(390円)を買い直すと930円になる。これは、京都から神戸まで直通は独占でありその利便性の分だけ料金を上乗せしているというもの。

実はこういう価格設定はたくさんあって、必ずしも料金が距離に比例していないので、利用者としては納得がいかないところもあるが、市場における供給と需要の関係もあり、仕方の無いところではある。しかしながら、これを放置すると人口が密集している地域ほど移動コストが小さくなり、結果として過密化・過疎化を助長することになる。これが困ったところ。