マネーの羅針盤(2012年05月19日放送分)

「デフレの正体」の著者、藻谷浩介氏をゲストに招いて、日本がなかなかデフレから脱却できない原因について解説している。
デフレの正体によれば、それは「現役世代(15歳~64歳までの生産人口)の減少と高齢者の増加による内需不振が原因」ということである。生産人口は、1995年までは一貫して増加していたが、そこからは減少に転じている。そのときとちょうどバブル崩壊やらが重なって日本は長期にわたるデフレの時代に突入したと言うことである。
一方で、企業は若者向けの製品ばかりを生産していた。商品ラインが若者向けであり、年長者向けの製品を出していない。そこで、年長者の購買意欲が伸びず、消費が伸びないということもデフレの要因になっている。
そこで、解決策として出されたのが「若者の所得増加」「女性の就労と経営参加」である。
で、所感であるが。
この解決策、後者は良いとして、前者はどうかなと思う。他の経済番組でも紹介した年齢と所得のギャップの話からも明らかなように、若者は総じて給与の方が生産力よりも優位にあるのだ。そこをデフレ脱却のために助長していこうというのは、どうだろう。企業の負担が増えるだけのような気がする。
一方で前者の方は、女性がいったん家庭に入っても容易に社会に復帰できる制度作りというのは、その関連事業のための雇用も含めると、就労者の大幅な増加に繋がるのではないかと期待できる。
ということで、女性の社会進出にエールを送りたいな。

コズミック フロント「砂漠のスペーストラベラー」

モハベ砂漠では宇宙開発のシリコンバレーという様相を呈している。というのは、2004年にスペースシップワンが民間で初めて宇宙飛行(といっても弾道飛行で大気圏を突破)したときに、そのベースとなったのが、モハベだったからである。その後、宇宙開発のベンチャー企業がそこに集まってクラスターを形成している。
今回は、そのスペースシップワンを開発したバート・ルターン氏に関して、初の宇宙飛行成功に至るまでの奇跡とその後をレポートしたものである。
で、なんで宇宙ものをブログに書くかというと、なんと言っても私はRLVが大好きなのだからである。(RLVとか大好きとかに関しては、過去プラネテスに関する記事を書いたので、そちらを参照)
特に、水平発射、水平着陸形式という技術的にも難易度が高いモデルに非常に興味がある。スペースシップワンは、母機(ホワイトナイト)から空中発射され、帰還時はグライダーとして帰ってくるので、まだそのレベルには達していなかったが、それにしてもスペースシャトルの引退によって再利用可能な宇宙往還機が現時点ではなくなってしまったときに、RLVを開発していると言うことに非常に惹かれている。
彼と彼の会社及びモハベに集まったベンチャーたちには頑張ってほしいなと思う。今後彼等の発展をモニターしていこうと思う。

カンブリア宮殿(1012/05/17放送分)

タイトルは「日本人にパンを!『日本とパンの歴史』」
ということで、神戸屋がテーマ。しかし、今回はスーパーで売っているパン商品ではなく、フレッシュベーカリーやフードサービス(レストラン)事業が中心であって、神戸屋はこれらの事業を首都圏や阪神、名古屋圏にしか展開していないので、九州地域にはあまりなじみがない。そういう私も大阪に住んでいたことはあったが、通勤経路などに神戸屋がなかったので、全く行ったことがなかった。
売り上げ規模としては、山崎パンなどに水をあけられているが、前述のフレッシュベーカリー事業、フードサービス事業などでは独自性を出していると感じた。国内で初めてベーカリーレストランを開業したそうで、最初はパンではなくてご飯を頼むお客が多かったとか。しかし、料理の味付けを、わざとご飯に合わないものに変えていき、パンと一緒に食べてもらうように仕向けたとか。
神戸屋の特徴としては、手作りにこだわると言うことと、製造部門以外の間接部門でもパン作りの国家資格を持っている(1500人中970人)ということかな。社長の方針で、職人を管理する側も職人並みのパンの知識が必要だと言うことだそうだ。
また、新商品の数は月間150個、そのうち市場に出るのは90個だと言っていたが、そんなに出すのか?という気がする。確かに、生き残っていくのはそのうちわずかあるかないかなのだろうが。それに、売れない商品はすぐに店頭から姿を消すそうだから。
最後に、少子高齢化で脂っこい肉から魚介類へとシフトしていくという予想の元、シー・フードによく合うパンの食べ方を研究し自社のレストランで試験的に提供していた。
神戸屋、九州地域にも展開してくれたら良いのだが。

オイコノミア(2012/05/15放送分)

今週のタイトルは「保険って結局トクですか?」(前編)
この番組、最近は経済学が前面に押し出されていておもしろい。今回は、いきなり大数の法則がでてきた。しかし、大数の法則を保険が成り立つ仕組みにとして説明していたが、それだけではないだろうな。ちなみに、大数の法則の反対は小数の法則であり、これは行動経済学によく登場する法則だな。
そして、生命表の話。保険料の算定に使っているものだが、結構細かく説明していた。
さらに、マグニチュード・エフェクトが出てきたが、これは行動経済学でしょ。ま、高い金額の買い物でも、分割払いにするとそれほど高く感じないということで、生命保険も同じだということが言いたかったみたいだが。
また、保険に入るとモラル・ハザードが生じて、保険に入っていないヒトよりもリスクが高くなること、そして、逆選択によって、リスクの高い人ほど保険に入ってくることの説明など、経済学的にはおもしろかった。
トークに関しては、最初に比べると笑いなどが入って多少明るくなってきたので、番組全体としては良い方向に進んでいるかな。経済学全般に関しては、もうちょっと順序立てて説明がほしいところだが、世の中の身近なものにスポットを当てて、それを経済学で読み解くという構成上、つまみ食い的な内容になるのは致し方ないか。

ガイアの夜明け(2012/05/15放送)

今週は「地域スーパーの最強戦略」と題して大手チェーンではない地域のスーパー3店舗を紹介していた。
1店舗目「マルエイ」
ここは、倉庫を持たない、市場での売れ残りを買い叩く、など徹底的にコストを削減して安値を実現しているスーパーである。また、ロス・リーダー政策も巧みに利用している。番組で紹介していたのは卵を1パック7円で売るというもの。ただし、1,000円以上お買い上げの方に限るというものである。ロス・リーダーはもともと価格弾力性が高い商品に関して採算度外視の安値を設定し、来店客を誘引させ、他の商品の関連購買を誘うというものだが、ここでは1,000円以上お買い上げの方に限りだから、より拘束的な政策というべきかも知れない。
2店舗目は「京北」
ここは、別の番組でも紹介されていたが、高品質、高価格の商品のみ扱うという、前述のマルエイとは逆の戦略のスーパーである。スキミング・プライス政策だから裕福な顧客層をターゲットにできる。映像を見る限り、確かにマルエイでは商品の争奪戦のようなことも繰り広げられていた。京北ではそのような光景はなく、顧客も上品な気がした(あくまでも個人的な意見だが)。
3店舗目は豊橋に1店のみある、超ローカルスーパー「一期家一笑」
ここは、地元の食材へのこだわりを前面に出している。食料品の産地は三河周辺を中心としたものばかりである。それから、店舗の従業員のほとんどが、約3,000人いるという常連客の名前を覚えており、名前で呼びかけているというからすごい。さらに地元の食材を使った手づくりの総菜を目玉にしている。というのが、大手に対抗する手段ということだった。
これらの3店舗は、いずれも独自の戦略で生き残りをかけていくという点でおもしろい。世は企業の合併に次ぐ合併で規模の大小が生き残りを左右するという様相を呈しているが、そうではなく創意工夫による生き残りの例として、おもしろいと感じた。

未来世紀ジパング(2012/05/14放送分)

今週は池上彰氏を解説者に迎えて、先日中国で起こった重慶の政治家、薄熙来氏の失脚事件の真実を読み解くというもの。
その事件は日本国内では重慶という地方都市で起こった地方政治家のスキャンダルとそれに伴う失脚という程度の報道されているが、中国国内では第三の動乱になるのではないかと言われている・・・らしい。
私もこの事件は上記の印象しかなかった。そこで、事件を整理してみる。
今年二月、重慶市で薄熙来氏の側近で公安局長の王立軍氏が逃亡し、米国領事館に逃げ込むという事件が発生した。中国共産党の重要人物がこともあろうに米国領事館に逃げ込むという事実は、中国政府では対処できない何かがあったことをうかがわせる。そしてそれは、英国人実業家の殺害事件と結びつく。王立軍氏は捜査の過程で、薄熙来夫婦が事件に関与した疑いがあることに気づいた。そして、王氏の部下の捜査員5人が薄熙来氏によって拘束されそのうち3人が死亡する事態となった。事ここに至って身の危険を感じた王氏は米国領事館に逃亡したということらしい。
この事件が引き金となって薄熙来氏のスキャンダルが世界中で報道されることになるのだが、話はここで終わらなかった。実はこのスキャンダルを政争に利用しようという動きが起こっていると言うことだ。今年の秋には中国共産党の党大会があり、権力闘争が繰り広げられている最中ということだった。薄熙来氏は中央の政治家になる野心を持っていたと言われている。中央の派閥には胡錦濤派と江沢民派に分かれており、薄熙来氏は江派に属している。そこで胡派は、この事件を利用して、権力の拡大を図ると言うことであった。
で、胡錦濤派が主流になると日中関係が改善される。池上氏は「実日」という言葉を使って実務的な関係になるのではないかという予測を立てていた。
しかし、この中国の権力闘争はすさまじいな。薄熙来という人物も、調べてみると相当なやり手だったらしい。しかしやり過ぎのきらいはある。これじゃ、マフィアの権力闘争と変わらない・・・。それだけ利権があるということなのかな。

アジアの風 小さな挑戦者たち 新日化マテリアル

 今週の挑戦者はなんと、地元福岡、飯塚のベンチャー企業である新日化マテリアルである。ベンチャーのインキュベーター施設(e-ZUKA トライバレーセンターだったな~)に入っている、社長の橘氏と従業員2名の会社である。この会社の主力(というか今のところ唯一)の製品は再剥離性ウレタン系粘着材(ガムタック)である。製品の特徴は、いろいろなものの表面に簡単に張り付きそして剥がしやすい性質を持った素材と言うことである。粘着力はクラフトテープ並みであり、何度も再利用でき、耐震材を上回る柔軟性を持っているという、非常に実用性に富んだ素材である。
 このガムタックがどういうところに使われるかというと、主にステッカー、シールなどを今はターゲットにしているようであった。また、製造工場などの仮止めにも用途が広がっているそうである。
 これを今回は東南アジアのマレーシアに売り込んでいきたいというのが、今回のテーマである。で、市場性に関して、具体的な使用方法が見えにくいため、低い点数となった。他のアナリストの評価は、市場性や将来性が高かった。これは、マレーシアが工業国と言うことと、周辺諸国へのゲートウェイという意味で市場が拡大していくのではないかと言うことであった。ただし、橘社長が模倣を避けるため特許を取らないという戦略には疑問を呈していた。ビジネス・パートナーを見つけていくことが課題ということだった。
 ちょっと気になったのは、(本質とは違うが)画面が汚い(某大河ドラマじゃないけれど・・・)。汚れた壁の前で社長のインタビューをするとか言うのは避けてほしいな。これは作る側の問題だね。ちょっと場所を変えれば、それなりに映える場所もあるだろうに・・・。そこが残念だ。
 一方、今回はセレンディピティという意味でも興味深かった。というのは、新日化マテリアルの橘社長は、父親が地元の塗装会社を経営しており、その会社が不況のあおりを受けて倒産した。彼は会社の建て直しのため、大学の理学部の知識を活かして、超強力接着剤の開発をしようとしていた。その過程で全く接着能力のない試作品ができたが、これが第三者のアドバイスで、ステッカー用途として道が花開いたというのだ。まさに、セレンディピティかなと思う。

今週のマネーの羅針盤より

 今週は、世界経済の動向について。ご承知の通り、GW明けからヨーロッパ経済が慌ただしい。ギリシアでは財政緊縮派が敗北し、連立工作も失敗するという事態になっているし、フランスの大統領選では現職のサルコジ氏が敗れ、財政規律の見直し論が高まることが予想されていて、ユーロの先行きが不安定になっている。
 国内では、日経平均株価が\9,000の大台を割り込み、時価総額にして37兆円あまりが喪失する事態となっている。
 今週のマネーの羅針盤では、このように不安定化を増す世界経済について、以下の3つの視点から解説している。
1.日経平均はどこまで下がる
 まず、最近の株価押し上げの要因はなんと言っても中央銀行による金融緩和政策であるということだった。つまり、資金供給による金余りが株式に流れているということであった。主な中央銀行のうち、日銀とECBの資金供給が顕著で、グラフを見るとこれら2つの中央銀行は対GDPで40%近くの金融緩和を行っていた。FRBが20%程度なのに比べると、倍近い資金供給を行っていることになる。一方で、この資金供給による株価の上昇は実体経済を伴っていないので、ここに来てだれてきているというのが、番組のエコノミストの見方であった。今後は政局を見ながらの不透明な展開が続くが、金融緩和が続いているので、底割れのリスクはないのではないかと言うことであった。
2.日本企業の今後
 日本を代表するソニーのような企業が多額の赤字を計上していて、日本の企業は大丈夫かという話だ。確かにソニーの赤字は大きいが、日本企業全体で見ると売上高は回復傾向にあると言うことだった。上場企業全体では24%の増益となっているということだ。同エコノミストの見方だと、新興国の追い風を受けている企業とそうでない企業との二極化が進んでおり、ばらついていると言うことだった。
3.世界経済も五月病
 ヨーロッパの混迷はソブリンバブルの影響であり、日本と同じであればヨーロッパも10年程度は低迷の時代が続くと言うことであった。
 で、最後のまとめの言葉として出てきたのが「神様はサイコロを振らない」であった。これはアインシュタインの言葉だが、番組では、物事には必ず原因があって、それが結果を導いているのだという意味で使われていた。でも、実際はアインシュタインが量子論を受け入れがたかったので、用いた言葉であり、意味は全く違うんだよね。ボーアやシュレーディンガーといった20世紀初頭の量子論の台頭は、マクロな物理運動を扱っていたアインシュタインの一般、特殊相対性理論とは全く違う考え方であって、彼にはどうしても受け入れがたかったらしい。彼は何とか事前の条件だけで必ず同じ結果が導き出せることを証明したかったので、確率論的な量子論を受け入れられなかった。そのため、彼は前述の「神様はサイコロを振らない」という言葉を使って量子論を批判した。経済とは全く関係ないが、この言葉が引用されたのはおもしろかった。

今週のカンブリア宮殿

 一方、今週のカンブリア宮殿はおもしろかったな。
 タイトルは【奇跡の構造転換で復活!「攻め」の経営とはこういうことだ!」】ということで、富士フィルムの話。村上龍が「自動車が売れなくなったトヨタ」と語っていたが、フィルムカメラの凋落により主力事業を失う中、多角化により生き残ったというところを紹介していた。
 多角化の代表的なものは、
 ・化粧品
 ・画像処理によるがん診断
 ・液晶FPD用のタック・フィルム
などである。
 いずれも、既存の銀塩フィルムを作ってきた技術やその関連技術をベースにしたものであり、新規のものではないと言うことである。化粧品は乳化剤を作るナノ技術をベースとしており、画像処理は画像処理、タック・フィルムはフィルム作成技術をベースとしている。
 液晶用のタック・フィルムに関しては、液晶パネル業界で世界規模の奇美(チーメイ)関係者が出てきて、富士フイルムを絶賛していた。
 異色と言えば化粧品だが、そのCMもおもしろかった印象がある。確か正月に見たバージョンでは、フィルムのCMでおなじみの樹木希林さんや松田聖子さんが出てきていたので、最初は毎年恒例のお正月バージョンのフィルムや写るんですのCMかと思ったら、そこから化粧品の紹介に移行したので強く印象に残っている。これはどっきり感をあおって視聴者に富士フイルムの多角化を印象づける効果としては抜群に奏功していると感じた。
 その他にも、関連分野の他社との合弁企業を作ったり、M&Aを仕掛けたりと、飽くなき挑戦は続いている。
 新しい研究施設も竣工していて、技術力で生き残っていこうとする同社の強い意志を感じた。
 その研究所のシンボルが「梟」であって、それはヘーゲル(法の哲学)の言葉「ミネルバの梟は黄昏に飛び立つ」から採ったものだという。この言葉は浅学のため知らなかったので、調べてみた。
 ミネルバ(ローマ神)はアテナ(ギリシア神)とも呼ばれ、知性と学問の神である。また、梟は知の象徴である。梟はその日のことが未だ分からない朝方はじっとして飛び立たないが、夕暮れになってその日のことがすべて終わるとやっと飛び立つという。その意味するところは「真の認識というものは一つの時代の没落が始まるときにこそ獲得できる」ということらしい。
 現在のように将来が見通せない混迷の時代こそ知性のあるものの時代だという自負とその知の修練を怠ってはいけないという戒めを表したものかなと思う。

今週のガイアの夜明け【新東名でチャンスをつかめ】

 こちらの所感もずいぶんと遅くなった。
 新東名の建設が始まったのは、1987年の中曽根政権の頃だから、四半世紀前と思うとずいぶん前という印象を受けた。当初は東名高速道路の増大する交通量の分散という意味合いだったそうだ。しかしながら、現在では防災などにも重きを置いており、SAにヘリポートを設けるなどしているとのこと。
 その新東名の各SAとそのあおりを食らっている現行東名のSAの巻き返しに関してが今週のテーマだが、個人的にはありきたりの内容に終始しているという印象を受けた。
 要は、
 ・新東名の各SAは、地元特産品の販売に力を入れていること
 ・現行東名の各SAは、新たな顧客を開拓すると言うこと
だけだった。
 現行東名SAの駐車場が閑散としている映像を映してそのレストランの支配人が「きびしいですね」というコメントを発するところなど、完全にパターン化している気がする。
 で、対応策としては、海外からの団体観光客(紹介されていたのは中国からの観光客)などをターゲットにすると言うことだった。(彼等から直接意見を聞いてメニューを工夫する(中国人は生野菜を食べない。炒めた方が良いなど)というくだりなどはどうかな・・・)
 高速道路、一般の基幹道路や鉄道網の新設に伴って、商圏が変化し、沿線の小売業に栄枯盛衰が起こるのは世の常だ。地元九州で言えば、九州新幹線の開通に伴う乗降客の変化などがある。今回のテーマもその一つに過ぎない。それ以上のものはなかったと思う。
 メロンパンが品切れで機会損失が発生し、「一人限定3個まで」「増産体制」で乗り切ったなんて、どうでも良くはないか?
 あぁ、辛口になってしまった。